母乳は虫歯の直接的原因じゃない。乳歯が生えた後も安心して母乳育児を続けるための10個のポイント

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助産師&母乳育児支援者&一児の母。 「ちょっとの勉強で、妊娠・出産・母乳・育児はもっとラクチンできる」「『母乳だけ』も混合栄養も全部母乳育児」という思いで、科学的な視点+リアル感覚の両方から周産期のことを解説しています。

1歳を過ぎたころから聞こえてくる「虫歯の原因になるから、そろそろおっぱいやめないと!」

母乳育児をしている人なら一度は言われるであろうこのセリフ。

家族、通りすがりの人(!)、果ては保健師・栄養士などの専門職者から言われることもあり、「そうか…断乳しないといけないのかも…」と思うのも無理はないと思います。

結論から言うと、母乳そのものは虫歯の直接的原因にはなりません

だから虫歯リスクを理由に卒乳・断乳、夜間授乳の中止を考える必要はありません

母乳育児をやめるタイミングは、あくまでお母さんと赤ちゃんとご家族にとって負担の少ない時期・やり方でやればいいんですよ。

このページでは、

  1. 母乳が虫歯の直接的原因にはならない理由
  2. 虫歯の原因のホントのところ
  3. 安心して母乳育児を楽しむためにできる具体的な予防策10個

についてまとめます。

母乳は虫歯の直接的な原因にはならない。

母乳中の主な成分は水分です。

水分の次に母乳中に多いのが「乳糖(にゅうとう)」という物質で、乳糖は糖質の一つです。

「乳糖=糖質の一種=虫歯の原因になる」と想像しがちですが、でもここで勘違いしちゃいけないのが、乳糖は虫歯の原因になりにくい糖質だということ。

母乳に多く含まれる乳糖だけが口の中にある状態では虫歯になるリスクは上がらないことが知られています。

虫歯のリスクとなる糖質は、「ショ糖(砂糖)」です。

「助産師は母乳を推進するあまり、こじつけ的に『母乳は虫歯の原因じゃない!』と言ってるんじゃない?」という懐疑的な人もいるかと思います。

子どもの歯を専門にする歯科医師で構成される「日本小児歯科学会」のHPでも以下のように説明しています。

母乳そのものはむし歯の直接の原因ではないが、「口のケア」が悪くてプラーク(歯垢)がたまり、母乳と食物残渣が口腔内にあればむし歯のリスクがとても高くなる。

じゃあ、虫歯の直接的原因になるのは何でしょうか?

虫歯の直接的原因は「母乳そのもの」ではなく、「食べカス+ミュータンス菌+母乳」

虫歯の直接的な原因になるもの。

その最たるものが「食べカス(特に砂糖)+ミュータンス菌」です。

ただし、「食べカス+ミュータンス菌」に「+母乳」となると虫歯リスクが上がることが知られています。

これが「虫歯になるから断乳を!」という主張の源だと想像します。

裏を返せば、食べカス(特に砂糖)を口の中に残さず、ミュータンス菌の増殖を抑えることができれば、安心して長く母乳育児を楽しむことができると言えますね。

虫歯の二大原因である、砂糖・ミュータンス菌についてちょっと詳しく考えてみましょう。

ショ糖(砂糖)について

食べカスの中でも、特にショ糖(砂糖)が虫歯の原因になりやすいのはご存知の通りです。

ショ糖(砂糖)は1歳前後になると必然的に口にするようになると思います。

ショ糖(砂糖)が含まれるものの例
  1. 肉じゃがなどの煮物に入れた砂糖
  2. ソース
  3. ケチャップ
  4. カレールー
  5. アメ・チョコなどのお菓子
  6. イオン飲料
  7. 果汁
  8. 乳酸飲料(ヤクルトなど)

このように多くの食べ物・飲み物にショ糖は含まれていて、ショ糖自体を徹底的に摂らないようにするのは現実的ではないと思います。

ミュータンス菌について

ミュータンス菌は虫歯の原因になる口腔内の細菌のこと。

多くの子どもの場合、歯が生えるとすぐにむし歯の原因菌である「ミュータンス連鎖球菌」が常在菌として歯の表面で成育し始める。

歯をきれいにしておかないと歯の表面に母乳や離乳食の食物残渣がたまり、「ミュータンス連鎖球菌」はそこに含まれる糖質を分解し、プラークを作って増殖する。

そのときに酸を産生するのでエナメル質表面に脱灰が生じやすい。(訳注:つまり虫歯になりやすい。)

(「日本小児歯科学会」HPより)

口の中に食べカス(特にショ糖)を残さないようにするとともに、このミュータンス菌の増殖を抑えるのが虫歯予防では重要ということになります。

母乳育児中の赤ちゃん~幼児の虫歯予防の10個のポイント

繰り返しになりますが、母乳は虫歯の直接的原因にはなりません。

でも「食べカス+ミュータンス菌」に母乳が加わると虫歯リスクは上がります。

じゃあ、

  • 乳歯が生えた後も安心して母乳育児を続けるためには
  • 安心して夜間授乳を続けるためには
  • 安心して1歳以降・2歳以降…と長期授乳するためには

何を気を付けたらいいのでしょうか?

ここまで説明した虫歯の原因の「本当のところ」を踏まえ、対策として何ができるか挙げてみたいと思います。

以下のような原則的なことに気を付けて、安心して母乳育児を続けてくださいね。

その①:お菓子は極力与えない。

ショ糖がたっぷり入っているものの代表格のお菓子。

お菓子の与え始めは遅ければ遅いに越したことはありません

(上の子がいたりして環境的に無理~という場合は③を徹底!)

その②:水分補給に砂糖が入ったものを与えない(イオン飲料・果汁など)。

意外と見落とされがちな、飲み物に含まれるショ糖(砂糖)。

「真夏はポカリ!アクエリアス!」という人がいますが、飲み物は水・お茶など糖分を含まないものが基本です。

その③:ダラダラ食べない。

①・②の予防法以上に大切と言われるのが、「飲み食いしている時間の長さ」です。

ダラダラ小まめにショ糖が含まれる食べ物・飲み物を摂っていると、歯の再石灰化が妨げられるので虫歯になりやすくなります。

決まった時間に食べて(飲んで)、それ以外の時間はお水や母乳だけにするのがとても大事です。

その④:仕上げ磨きをする。

特に長い時間眠る夜の仕上げ磨きは重要です。

お昼寝前もできるに越したことはありませんが、あまり現実的ではないと思いますので、食後にお水・お茶を飲ませてあげて少しでも口の中に食べカスが残らないようにします。

その⑤:3~4ヶ月に1回歯科医院でフッ素塗布

赤ちゃん・子どもにもかかりつけの歯科医を。

歯の状態チェックを兼ねて定期的に歯科医院でフッ素塗布してもらうのがおすすめです。

小さい頃から歯医者さんに慣れ親しんでおく(苦手意識を持たない)という意味も込めて。

(初回の歯医者が虫歯治療だと、「歯医者=痛いことされる」というイメージが根付きそうですよね)

その⑥:日常でもフッ素ジェル・スプレーを使う。

レノビーゴなどのスプレータイプだと、まだ奥歯が生えていない赤ちゃんでもガーゼ・綿棒にシュッ!と吹きかけてササっと拭くように使えるので便利ですよ。

その⑦:大人の虫歯治療・予防をする。

虫歯の原因菌であるミュータンス菌は、大人から子どもに移ります。

虫歯が放置された人の口内は、ミュータンス菌が高濃度です。

普段お子さんを世話する大人が虫歯を放置しないよう、また虫歯予防するよう心がけます。

その⑧:大人とコップやペットボトルを共有しない。

ミュータンス菌が大人→子どもに移らないようにするために、口に直接触れる食器類の共有は避けます

その⑨:大人の口に入れた物を子どもに与えない。

⑦・⑧と同じ理屈ですが、ミュータンス菌の移行を防ぐために、大人の口でモグモグしたものを子どもに与えるのは避けます

(震災など特別な事情の時は、例外となることもあるかもしれませんね)

その⑩:「乳歯だから虫歯になってもいいじゃん!」と開き直らない。

「乳歯はいずれ抜けてなくなるから虫歯になっても大丈夫!」という声も聞いたことがあります。

…が!

乳歯が虫歯になる=すでに口の中がミュータンス菌まみれで永久歯も虫歯になりやすい環境

だということです。

永久歯が生えてきても、ミュータンス菌まみれの悪い環境の口だと、永久歯もやはり虫歯になりやすくなります。

「永久歯になってから頑張ればOK!」と思わず、乳児期から口腔ケアを心がけましょうね。

まとめ

  1. 母乳そのものが虫歯の原因になるわけではないこと
  2. でも、食べカス(特に砂糖)+ミュータンス菌に母乳が加わると虫歯リスクが上がること
  3. 適切に「子どもも大人も」ケアすれば、夜間授乳も長期授乳も安心して楽しめること

についてまとめてきました。

特に「大人の口腔ケア」は見落とされがちです。

(お父さん・おばあちゃん・おじいちゃんはもっと見落とされがち)

子育て中は忙しくて、痛くもないのに歯医者に行こうとは思わないかもしれません。

でも、自分の為にも子どもの為にも、定期的に歯科受診する習慣を作ってくださいね。