1歳過ぎると母乳の栄養はない・薄くなるはウソ。メリットたくさん!

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1歳すぎたら母乳が薄くなって栄養なくなるって言うけど、本当?

だったら1歳過ぎたら断乳すればいいんだよね?

という疑問にお答えします。

この記事で分かること
  1. 1歳(あるいは6ヵ月)を過ぎたからと言って、母乳が無価値にはならない。
  2. 1歳以降も母乳育児をするメリット
  3. 卒乳・断乳の時期の考え方

1歳過ぎると母乳の栄養はない・薄くなるはウソ。メリットはあります!

数十年前は12ヶ月での断乳が日本では一般的だった影響もあり、特におばあちゃん世代は「1歳過ぎたから、そろそろ断乳ね」と考える人も多いようです。

ですが、その後の様々な研究により1歳を超えても長期授乳することには、子どもにもお母さんにもメリットがあることが分かってきています。

代表的なメリットを6つご紹介します。

1歳以降も母乳育児をするメリット①:母乳の栄養価がなくなることはなく、子どもへの母乳のメリットは母乳の総量の分だけ与えられる

母乳に免疫や栄養があるのは、補完食(離乳食)を始める頃までだと思っている人もいるようです。

確かに、生まれてすぐの頃に出てくる初乳と、生後しばらくしてからの母乳(成乳といいます)では成分に変化がありますが、変化があるだけで無価値になる訳ではありません

母乳が薄くなったり、栄養がなくなることは、母乳育児を継続している限りありません。

また、母乳は与えた総量の分だけ、そのメリットが上乗せされると考えられています。

ミカ子
混合栄養でも長く続ければ与えられる母乳の総量は増えますから、母乳育児期間は「6ヶ月よりは1年、1年よりは2年」という事ですね。
初乳と成乳の違い
  1. 初乳に多く含まれるもの:タンパク質、抗酸化因子、ビタミンB12、オリゴ糖、ラクトフェリン、亜鉛、鉄、カルシウム…等々
  2. 成乳に多く含まれるもの:エネルギー、脂質、乳糖、ビタミンB6

つまり、赤ちゃん・子どもの月齢に応じて、必要な成分が入っているのが母乳なんですね。

1歳以降も母乳育児をするメリット②:子どもの体調不良時の脱水予防になる

長く母乳育児を続けていて切実に「良かった…」と思える瞬間は、胃腸炎・手足口病などで食べたり飲んだりが一切できなくなった時です。

そんな具合の悪い時でも「母乳だけは飲めた」というお子さんはとても多く、「脱水の心配だけはしなくて済んだ」というのはとても心強いものです。

1歳以降も母乳育児をするメリット③:お母さんが風邪・インフルエンザ等の感染症にかかった時、感染した病原菌に応じた抗体を母乳を通じて与えられる

母乳育児中にインフルエンザや胃腸炎などの感染症にかかった時には、お母さんが罹った病原体に対する抗体が母乳中に分泌されることが分かっています。

つまり、例えお母さんが感染症にかかっても、いつも通り母乳を与えるだけで、子どもに感染予防・重症化予防をしてあげられていることになるんですね。

1歳以降も母乳育児をするメリット④:子どもにとって理不尽で、母への愛着を阻害するような、無理な断乳をしなくて済む

かつては「長く飲んでいると甘えた、自立心のない子どもに育つ」と言われた時代もあったようですが、そのような根拠はありません。

お母さんとの愛着の象徴的存在であるおっぱいを、ある日突然取り上げられたら、子どもにとってはこの上なく理不尽に感じられるでしょう。

やり方によっては子どもの心を傷付け、お母さんとの愛着への信頼を損なうことにもなりかねません。

何日も激しく泣き続けてなんとか断乳成功したとしても、すんなり成功したとしても、子どもの心を傷つけたり親子の信頼関係にヒビが入る可能性は否めないと思います。

断乳の時期を画一的に決めるのはやはりナンセンスだと思います。

1歳以降も母乳育児をするメリット⑤:時期を決めて断乳しないことで、乳腺炎を予防できる

「時期が来たから」と断乳することは、お母さんへのデメリットもあります。

授乳回数が多いまま、ある日急に断乳すると、乳腺炎になるリスクが高くなります。

乳腺炎までいかなくても、おっぱいがカチカチに張って、身動きするのが辛くなるほど痛くなることがよくあります。

こういったリスクを背負ってまで、「時期が来たから」という理由だけで断乳するのはナンセンスですよね。

1歳以降も母乳育児をするメリット⑥:1年以上母乳育児を続けることは、お母さんの各種病気の予防効果がある

母乳育児期間を長くすることを語る時、子どもへのメリットに目を向けることが多いですが、お母さんにもメリットがあることが分かっています。

12ヶ月以上の母乳育児による母親の生活習慣病予防効果
  1. 高血圧:リスク12%低下
  2. 糖尿病:リスク20%低下
  3. 脂質異常症:19%低下
  4. 心血管疾患:9%低下
24ヶ月以上の母乳育児による母親の生活習慣病予防効果
心血管疾患:42%低下

生活習慣病以外でも、

  • 閉経前の乳がん
  • 卵巣がん
  • 関節リウマチ

など、長期間授乳することで様々な疾患にかかるリスクを下げることが分かっています。

母乳はいつやめればいいのか?卒乳・断乳の考え方

1歳過ぎても母乳に価値があるのは分かったけど、じゃあいつ母乳をやめればいいの?

と思いますよね。

ミカ子
結論だけ言うと、「自分たち親子にとって適切だと思える時期がきたら」となります。

基本的には、子どもが自然におっぱいをほしがらなくなる「卒乳」が、母乳育児のメリットを最大化し、お母さんと子どもの愛着形成にも影響せず一番良いと思います。

一方で、お母さんが母乳育児に制限がかかるような病気になったり、家族の事情などで「断乳」をすることになる場合もあるでしょう。

断乳することになった場合でも、できるだけ段階を踏んで、子どもにも事前に説明をすることで、弊害を少なくすることができると思います。

負担の少ない断乳や、卒乳・断乳時期の考え方については別の記事にまとめていますので、併せてご覧ください。

【助産師が教えます】負担が少ない断乳方法「5つのプロセス」

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授乳(母乳)はいつまで?卒乳のタイミングや時期を決めるのは自分!

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まとめ

1歳を過ぎても母乳が薄くなったり栄養がなくなったりするわけではないこと、1歳以降も母乳育児を続けるメリットについてまとめてきました。

この記事のまとめ
  1. 1歳(あるいは6ヵ月)を過ぎたからと言って、母乳が無価値にはならない。
  2. 1歳以降も母乳育児をするメリット①:母乳の栄養価がなくなることはなく、子どもへの母乳のメリットは母乳の総量の分だけ与えられる
  3. 1歳以降も母乳育児をするメリット②:子どもの体調不良時の脱水予防になる
  4. 1歳以降も母乳育児をするメリット③:お母さんが風邪・インフルエンザ等の感染症にかかった時、感染した病原菌に応じた抗体を母乳を通じて与えられる
  5. 1歳以降も母乳育児をするメリット④:子どもにとって理不尽で、母への愛着を阻害するような、無理な断乳をしなくて済む
  6. 1歳以降も母乳育児をするメリット⑤:時期を決めて断乳しないことで、乳腺炎を予防できる
  7. 1歳以降も母乳育児をするメリット⑥:1年以上母乳育児を続けることは、お母さんの各種病気の予防効果がある
  8. 最適な卒乳・断乳の時期は、それぞれの親子によって違う。

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