授乳(母乳)はいつまで?卒乳のタイミングや時期を決めるのは自分!

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助産師&母乳育児支援者&一児の母。 「ちょっとの勉強で、妊娠・出産・母乳・育児はもっとラクチンできる」「『母乳だけ』も混合栄養も全部母乳育児」という思いで、科学的な視点+リアル感覚の両方から周産期のことを解説しています。 個別のご相談はこちらから →https://baobabu.online/

卒乳・断乳のタイミングについては、

  • 昔ながらの「1歳過ぎたら断乳を!」「歯が生えたら断乳」
  • WHO/UNICEFが推奨する「2歳までは母乳育児を!」

いろんな意見があって、どうすればいいか、何が本当にいいのか分からなくなってしまいますよね。

このページでは「母乳育児のやめ時=卒乳・断乳のタイミング」についてまとめています。

「断乳」と「卒乳」の言葉の定義
  • 断乳:まだ子どもが母乳を欲しており、母乳分泌もある状態で、意図的に母乳を与えるのをやめること。
  • 卒乳:子どもと親、家庭の状況に応じて、自然に母乳を飲まなくなり、分泌もなくなること。

授乳(母乳)はいつまで?卒乳のタイミングや時期を決めるのは自分!

最初に結論だけを言えば、「いつおっぱいをやめるか?」はそれぞれの親子・家庭ごとに適切な時期は異なるということ。

卒乳(断乳)のタイミングを決めるのは「赤ちゃん&お母さん&家族」です。

  1. 世界の標準は?
  2. 栄養学的・免疫学的に理想の卒乳のタイミングは?
  3. 長期授乳をするメリットはあるの?1歳過ぎたら母乳は水と一緒って言われたことがある!

といったことはこの後まとめますが、だからと言って「その平均・根拠・他人の感性を我が家にも当てはめなければいけない」ということではないのです。

色々な事情があって、1歳前のような早いタイミングで母乳育児を終了したい親子もいれば、4歳5歳まで長期授乳をしたい親子もいるのです。

「母乳育児期間が短いからダメ」「いつまでも母乳飲んでるからダメ」なんてことは全然ありません。

基本は、お母さんと赤ちゃんが納得…までいかなくても、

「母子ともに大きな負担を感じずに母乳育児をやめられるタイミング=卒乳(断乳)のタイミング」

になると私は考えています。

卒乳のために特別なことをする必要はありません。

このページでは、自然と授乳しなくなる(子どもが授乳を必要としなくなる=授乳回数が減る=母乳分泌が減る)ことを「卒乳」と表現しています。

卒乳の場合は「さぁ!卒乳するぞ!」と気合を入れる必要もないし、何か特別なことをする必要もないです。

子どもの欲求に応じて、家族の生活スタイルに合わせて授乳している内に、いつの間にか授乳の存在がなくなって(少なくなって)いきます。

断乳する場合は段階的&計画的に!

卒乳とは反対に、様々な事情で

  1. まだ授乳回数が多くて
  2. 子どもも授乳を必要としていて
  3. 乳汁分泌も多い時期に

授乳をやめる(断乳する)には、少しの気合いと戦略が必要です。

お母さんにも子どもにも、母子を取り巻く家族にも少なからず負担がかかります。

母子にとって負担が少ない断乳方法」については別ページで詳しくまとめていますので、併せてご覧ください。

【助産師が教えます】負担が少ない断乳方法「5つのプロセス」

2019年2月19日

世界の卒乳年齢の平均は4.2歳

「それでも他のみんなはいつまで母乳あげてるの?」と思いますよね。

タイトルにもある通り、全世界での卒乳平均年齢は4.2歳です。

日本で4歳で母乳を飲んでると驚かれることも多いですが、日本で昔から言われる「1歳過ぎたら断乳」が早すぎる傾向にあるというのはお分かりいただけると思います。

世界的機関が母乳育児を推奨する期間は?

世界保健機構(WHO)

生後6ヶ月は母乳だけで児を育て、補完食をはじめたのちも2歳かそれ以上まで母乳育児を続けることを推奨。

アメリカ小児科学会

少なくとも12ヶ月、それ以後は母子が望む限り長く授乳を続けることを推奨。

日本で従来から言われる「1歳過ぎたら断乳」は画一的すぎる

先述したように世界の平均は4.2歳。

そして、栄養・免疫など様々なことを考慮して「最低12ヶ月ないしは2歳まで、かつ『それ以上長く』」と推奨されているのです。

ですから、従来の日本のように「1歳=断乳の時期」と画一的に断定するのはちょっと乱暴だと言えると思います。

文化や思想を排除した、「ヒト」としての卒乳に適した時期は?
文化人類学者のDettwyerによれば、

  • さまざまな動物の乳離れの完了時期
  • 妊娠期間の長さ
  • 永久歯の生える時期
  • 大人の体の大きさ

との比較で調べたところ、人類の乳離れ完了の適正年齢は3歳から7歳の間である。

「補完食(離乳食)を食べない=母乳のせい」じゃない

子どもがごはん(補完食・離乳食)を食べないと言うと、真っ先に原因として挙げられてしまうのが母乳育児。

「おっぱいやめれば食べるようになるわよ!」と周囲の人や専門職に言われたことがある人も多いと思います。

本当に母乳育児をやめたらごはんを食べてくれるようになるのでしょうか?

結果を申し上げると、母乳をやめることで食事を食べるようになる子もいるし、あまり変わらない子もいます

母乳をやめて食事を食べるようになった子も、もしかしたら「断乳のタイミングがたまたま食事量が増えるタイミングだった」可能性もありますよね。

少食を解決するために断乳するのは、一種のバクチとも言えます。

厚生労働省の指針でも「離乳の完了は、母乳または育児用ミルクを飲んでいない状態を意味するものではない。」とされています。

貧血など医学的な異常が疑われていないのなら、母乳育児を続けながら子どもが食べるようになってくれる時を待てばいいと思います。

母乳は虫歯の直接的原因にはならない。

「虫歯になるから断乳を!」を何十年も前から言われ続けている「断乳コール」の文言です。

結論から言うと、母乳そのものは虫歯の直接的原因にはなりません

ですから、虫歯リスクを理由に母乳育児をやめる必要はないんです。

「母乳と子どもの虫歯」については、別の記事で虫歯予防のポイントを含めて書いていますので併せてご覧ください。

母乳は虫歯の直接的原因じゃない。乳歯が生えた後も安心して母乳育児を続けるための10個のポイント

2019年2月17日

1歳を過ぎても授乳するメリット

世界的には1歳を過ぎても母乳育児を続けるのが通常だし、それが推奨もされていることが分かったと思います。

様々な研究から、長く母乳育児をすることには、子どもにとっても母親にとってもメリットがあることが分かっています。

子どもの「身体的健康」への長期授乳のメリット

  1. 母乳育児期間が長いほど、母乳育児の長期的な効果(感染予防、免疫制御、認知能力の向上)が高まることが分かっています。
    つまり母乳の成分は赤ちゃんが1歳を過ぎても変化を続けて、母乳の価値が「水と同等」になることはなく、すぐれた栄養として重要で、子どもの免疫組織の強化にも役立つことが分かってきました。
  2. 生涯飲む母乳の摂取総量が多いほど、様々な病気にかかるリスクが減る
    小児白血病、リンパ腫、耳の感染症、 呼吸器感染症、下痢、インフルエンザ桿菌(Hib)、肥満や過体重のリスクが減ることが分かっています。

この2点から言えるのは、母乳を飲んでいる間はもちろん、飲み終わった後も生涯にわたって子どもの健康に良い効果があるということです。

そして、母乳の効果を最大限に引き出すには、「より長い期間」「よりたくさんの量を」授乳することが必要だと言えます。

子どもの「精神的健康」への長期授乳のメリット

この項目は明確な根拠があるわけではなく、様々な書籍を読んだり私自身が子育て支援に携わってきて感じている「主観・意見」です。

安全基地があることによる精神的自立を助ける

「おっぱいをやめないから母親に依存的になる」という声もよく耳にしますが、本当にそうでしょうか?

私はむしろ逆だと考えています。

母乳育児に限らず「絶対的な安全基地」があると感じられる子どもの方が、長い目で見た時には自立心旺盛になると思います。

母乳育児をしていてもしていなくても、3~4歳頃までの子どもがお母さん(お父さん)に強い絆を求めて離れたがらないことはごくごく普通のことです。

子どもは「おっぱい」あるいは「お母さん・お父さん」という安全基地をよりどころにして、

  1. ちょっと安全基地から離れて冒険して、
  2. 悲しいことや怖いことがあったらまた安全基地に帰ってきて安心して、
  3. また冒険に出る勇気をもらって、
  4. 再び安全基地から離れて冒険する。

ということを繰り返しています。

そういう成長過程にいる時にむやみに安全基地を取り上げると、

  • 絶対的な安心感が育まれないためにお母さん(お父さん)から巣立っていく勇気が持てず、
  • むしろ後追いが激しくなったり、
  • 依存的になるかもしれない

と私は思います。

「自分には安全基地があるんだ」という絶対的な安心感を子ども自身が納得するまで確認できれば、見せかけでなく本質的な意味で、子どもの自立を助けてあげることができると思います。

ここで言う「安全基地」になり得るのは授乳に限定したことではありません。

「お母さん・お父さん・あるいは、おばあちゃん・おじいちゃん」その人自体であってもいいわけです。

ただ、子どもにとってすでに「おっぱい=安全基地」になっているなら、無理に取り上げる必要はなく、むしろあった方が精神的自立にもつながるのではないかと思うのです。

イヤイヤ期の親子の衝突・親のイライラ防止に役立つ

それから、2~3歳頃のいわゆるイヤイヤ期のストレス軽減にも母乳育児は一役買ってくれます。

  • 子どもの「こうしたい!」「でも言葉で表現できない!」というジレンマも、
  • そんなことまで応えてあげられない!→だから叱って(怒鳴って)子どもを押さえつける→自己嫌悪という親のストレスも、

授乳という選択肢があるだけで、ほんの一瞬でお互いに落ち着くものです。

「もうどうにもならん!!」となった時に授乳をすることで、

  • 親は子どもを強く叱りつけて自己嫌悪
  • 子どもは頭ごなしに自分の欲求をはねつけられて(たように感じて)自分への自信や他者への信頼をなくしていく…

というリスクが随分減るのではないかと思います。

お母さんへの長期授乳のメリット

長期授乳は子どもへの好影響だけでなく、お母さんにもメリットがあることがわかっています。

乳ガンリスクを減らす効果

乳ガンを防ぐ効果は授乳期間とのかかわりが深く、最も乳ガンにかかりにくいのは、

  • 一人以上の子どもを、
  • 合計5~6年以上、
  • 完全に母乳で育てた女性

と言われています。

育児ストレスを軽減する効果

先ほど「子どもの精神的健康への長期授乳のメリット」の項で書いた通りです。

子どもの欲求と、それにどうしても応えられない衝突が起きた時、親子でイライラして険悪な雰囲気になったり、暴言に近いような発言を子どもにしてしまうことは珍しくないと思います。

長期授乳は人によって合う/合わないがありますが、合う人の場合は、1歳2歳を過ぎても母乳育児をしていることで、

  • 授乳することによってイライラした子どもがクールダウンして落ち着く
  • 子どものクールダウンでお母さんも落ち着く+授乳で出るホルモン(オキシトシン)のおかげてリラックス

することができます。

「長期授乳=育児負担が増える」というイメージが先行していると思いますが、むしろ育児負担が減るように感じる人もたくさんいます。

参考書籍

この項目は以下の書籍を参考に書きました。

  • NPO法人日本ラクテーションコンサルタント協会「母乳育児支援スタンダード」
  • 水野克己ほか「改訂第2版 よくわかる母乳育児」
  • ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル「だれでもできる母乳育児」
  • 大山牧子「母乳で育てられている赤ちゃんとお母さんにやさしい保育園をめざして」
  • 本郷寛子「母乳と環境」
  • アメリカ小児科学会編「母乳育児のすべて」

だれでもできる母乳育児 /ラレーチェリーグインターナショナルは母乳育児全般について書かれた本ですが、医療者向けでなく一般向けに書かれているので分かりやすくてオススメです。

まとめ

卒乳・断乳の時期についてまとめました。

科学的根拠を集めると「より長く母乳育児をすることが正解」のような文脈になりますが、冒頭にも書いたように、母乳育児を辞めるタイミングはそれぞれの親子にとって「ここが良い!」と思うタイミングでOKなのです。

もし早い時期に母乳育児をやめる選択をしたとしても、それまでに与えた母乳の量・期間は、母乳育児を終えたあとも子どもに恩恵を与えてくれるはずです。

今回まとめたような根拠を参考にしつつも、古くからある勘違い情報や、周囲の人の主観(私自身の意見の含む)にまどわされず、「あなたたち親子にとっての」ベストなタイミングで、わだかまりなく母乳育児を終えられるようにしてくださいね。

まだ母乳分泌が盛んな時期に「断乳」をしなければならなくなった時の方法については、別の記事でまとめていますので併せてご覧くださいね。(現在準備中)

母乳は虫歯の直接的原因じゃない。乳歯が生えた後も安心して母乳育児を続けるための10個のポイント

2019年2月17日

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