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国内初めての液体ミルクが、2019年3月5日に江崎グリコから販売開始しました。
この後、明治からも発売予定です。
便利さ・手軽さからニュースでもよく取り上げられていますが、助産師の立場から考えると「母乳もあげたい」と考えている人にとっては心配な点もあるなと感じています。
このページでは、混合栄養の赤ちゃんやお母さんにとって、液体ミルクにどんなメリット・デメリットがあるか考えてみたいと思います。
液体ミルクの特徴・使い方まとめ
この項は、江崎グリコの販売ページからの引用となります。
液体ミルクの特徴
・液体ミルクとは、粉ミルクと同様の成分で、新生児から飲ませることができます。
・調乳済みのミルクが液体になっており、お湯や水に溶かしたり、 薄めたりする必要はありません。
・温めることなく、赤ちゃんに飲ませることができます。
・哺乳瓶に入れ替えてください。
・無菌で容器に充填され、常温保存可能です。
液体ミルクの使い方
【ミルクの飲ませ方】
①開封前によく振る。
②専用ストローのストッパー部がはまるまでさす。
③消毒した哺乳瓶に移し替える。
④水などで希釈せず、そのまま飲ませる。
液体ミルク使用時の注意点
【摂取、調理又は保存方法の注意】
●飲み残しは捨てる。
●開封後はすぐに飲む。
●飲む量は個人差があるので、必要に応じて加減する。
●赤ちゃんの体質や健康状態を考慮して使用すること。
●使用にあたっては、医師や管理栄養士等にご相談ください。
●無菌充填なので、常温で上部記載の賞味期限まで、使用可能。
●温める際は別容器に移し、必ず人肌に冷まして使用すること。
●容器に破損・膨張等や、色・におい・味に異常がある場合は使用しないこと。
●紙パックに入ったまま、電子レンジで加熱しないこと。
●冷たさが気になる場合は、室温(20℃前後)に戻すこと。
液体ミルクのメリット3つ
私が考える、混合栄養児とお母さんにとっての液体ミルクのメリットを3つ挙げます。
メリット①:調乳不要でラク
液体ミルクでは、従来の粉・キューブミルクで必要な調乳(以下の手順)が省略できます。
- 水を80度以上に加熱
- 湯と粉(キューブ)を混ぜる
- 人肌に冷ます
この手間を省けることによるメリットが2つあると思います。
- 調乳不要だから、手間が減る。
液体ミルクを日常使いする場合の最大のメリットは「調乳不要」だと思います。
特に夜~早朝は起き上がってキッチンでミルクを調乳するのは大変で、調乳のせいで目が覚めてしまって眠れなくなってしまう人もいると思います。
母乳もミルクも両方の混合栄養は手間が多いと感じる人が多いので、調乳しなくていいのはいいですよね。 - 外出時の荷物が減る。
外出する時も、「ミルクのためのお湯を魔法瓶に入れて、哺乳瓶も持って」というのは荷物がかさばって&重たくて大変ですよね。
液体ミルクは水やお湯での希釈が不必要なので、荷物が減るのも嬉しいポイントかと思います。
メリット②:水(湯)不要だから、災害時にも使える
水やお湯で薄める必要がないので、清潔な水の確保が難しい災害時には心強いですね。
混合栄養の場合は非常用に常備しておくといいと思います。
メリット③:常温でそのまま飲ませることができる
江崎グリコの販売ページには、「温めることなく、赤ちゃんに飲ませることができます」と記載されています。
粉・キューブミルクは80度以上に加熱したお湯で調乳するため人肌に冷ます必要がありますが、この手間を省けるのはラクでいいですね。
液体ミルクのデメリット5つ
液体ミルクのデメリット、特に混合栄養児では心配な点があると私は考えていますので、その点についてまとめます。
デメリット①:1パック125~240mlと混合栄養児には多めの容量だが、1回で使い切らないといけない。
液体ミルクの1パックの量は以下のようになっています。
- 江崎グリコのアイクレオ:1パック125ml
- 明治:1パック240ml(プレリリース情報より)
生まれたばかり~生後3ヵ月くらいの赤ちゃんで混合栄養をしている場合、1回の補足量が20~40ml程度になることはよくあります。
特に1回の使用量が少なくていいことが多い混合栄養では、使う量より廃棄量の方が多くなってしまうデメリットがありそうです。
デメリット②:必要以上の液体ミルクを使うことにより、母乳分泌量が減るリスクがある。
液体ミルクは、
- 開封後はすぐ飲む&飲み残しは捨てることが必要
- だから、混合栄養児の場合は捨てる量の方が多い可能性が大きい。
とデメリット①で書きました。
そうすると…
というのが当然の消費者の気持ちですよね。
でも、母乳もあげたいと考えている混合栄養の場合は、それをすると確実に起こるであろう心配ことが…
必要以上のミルクを飲んでもらう
→飲む母乳量が減る
→母乳が分泌が減る・母乳が出なくなる
という可能性が非常に高くなります。
母乳は赤ちゃんが飲んだ分だけ(あるいは搾乳した分だけ)新しく母乳が作られるという仕組みです。
ですから、赤ちゃんの飲む量が減れば、当然の結果として母乳分泌量は減ります。
赤ちゃんにちょうどいい量「だけ」のミルクを足すことが、母乳栄養も継続したい場合にはとても重要です。
デメリット③:液体ミルクは、粉ミルクに比べて値段が高い
江崎グリコの液体ミルク(1パック125ml)=216円
缶入り粉ミルク125ml相当=約35~50円
液体ミルクは粉ミルクの4倍以上の値段となります。
先述した通り、混合栄養の場合は廃棄する量も考えると、コストはもっと上がりますね。
デメリット④:調乳不要ではあるが、哺乳瓶・カップの洗浄は必要
液体ミルクの場合でも、授乳に使ったカップ・哺乳瓶・人工乳首の洗浄は必要です。
なぜなら、
調乳に関する手間が完全にカットできるわけではないのはデメリットとも言えると思います。
さらに、災害時にはカップ・哺乳瓶の洗浄のための水の確保も難しかったと聞きます。
災害時のことを想定すれば「そのまま赤ちゃんの口に入れられる状態の液体ミルク」があるといいのにと思います。
デメリット⑤:粉ミルクに比べて保存できる期間が短い
賞味期限を比較すると、粉・キューブミルクに比べて液体ミルクの方が短くなります。
従来の、粉・キューブタイプの賞味期限は12ケ月~18ヶ月程度です。
一方、液体ミルクの賞味期限は…
- 江崎グリコの「アイクレオ 赤ちゃんミルク」:常温で6カ月保存できる。
- 明治(未発売):賞味期限1年(プレリリース情報より)
2019年3月現在、上記2社から液体ミルクの発売が決定していますが、液体ミルクの賞味期限は常温で6~12ヶ月のようです。
液状化しているので、当然、粉状・キューブ状のミルクの賞味期限よりは短くなりますね。
混合栄養の場合は、使うミルク量が変化しやすく、先の使用量の見通しが持ちにくいので、この保存期間の短さがデメリットに感じる人もいると思います。
まとめ
混合栄養をしている母子・家族にとっての混合栄養のメリット・デメリットについて、私の考えをまとめました。
【メリット】
- 調乳不要で、夜・外出時が特にラク
- 水・お湯が不要
- 常温で飲める
【デメリット】
- 混合用の場合、1パックを1回で使い切れない可能性大
- ミルクを足し過ぎることによる母乳量減少のリスクあり。
- 値段が高い。
- 哺乳瓶やカップの洗浄は必要
- 保存期間が粉・キューブに比べて短い。
液体ミルクが、従来の粉・キューブミルクより使い勝手がいいのは間違いないと思います。
ただ私が心配しているのは、デメリットの項でも触れたような以下のことです。
- 母乳栄養を希望していながら、液体ミルクを補足し過ぎて母乳量が減っていってしまう人がいると想像できる。
- 母乳栄養したいと考えていても、「調乳不要」という手軽さから善意でプレゼントする人が増える。
→本来必要のないミルクを使って、母乳分泌量が増えない・減る人が出てくると想像できる。
液体ミルクの使用やプレゼントに当たっては、授乳をする当事者であるお母さんの思い・希望をよく考えて、本末転倒な結果にならないよう、賢く使ってもらえたらいいなと願っています。
と江崎グリコの販売ページには明記されています。