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という疑問にお答えします。
- お母さんへの母乳育児のメリット・利点
- 赤ちゃんへの母乳育児のメリット・利点
お母さんと赤ちゃんへの母乳育児のメリット・利点
お母さんへの母乳育児のメリット・利点8つ
母乳のメリットがあるのは「赤ちゃんにとって」だけだと思っている人もいるのではないかと思います。
…が、実は授乳をするお母さん自身にとっても多くの利点があることが分かっています。
ここではメリット8つについて、解説していきますね。
お母さんへのメリット①:産後の出血量が少なくなる
赤ちゃんがおっぱいを吸うと、お母さんから出てくるホルモンの1つに「オキシトシン」があります。
この「オキシトシン」には色々な効果があることが分かっています。
- 母乳をビュー!っと勢いよく出す効果
- 子宮をギュゥ~っと小さく縮める効果
- お母さんの緊張をほぐし、リラックスさせる効果
この効果の②のおかげで子宮がより早く元の大きさに戻ろうとします。
子宮が早く元の大きさに戻る=出血が減るのはどうしてでしょう?
この直径20㎝ものカサブタ(胎盤)が一気にベリっ!とはがれた状態が産後直後です。
つまり、カサブタがはがれた部分をより早く小さく収縮させることによって出血を減らすことができる、というワケです。
出血が少なくなると、貧血の予防・妊娠中からの更なる進行予防に役立つので、産後の体調も安定しやすくなります。
お母さんへのメリット②:授乳ホルモンの影響でリラックスしやすくなる
先述した授乳によって分泌されるホルモン「オキシトシン」の効果の1つに「緊張がほぐれ、リラックスできる」というものがあります。
多くの女性が授乳を始めて少しすると、
- 頭がフワ~っと軽くなる。
- 体の力が自然に抜ける。
- 眠くなる。
などの経験をします。(あまり変化を感じない人もいます)
産後間もない時期の頻繁な授乳でも、オキシトシンのおかげでスムーズに深い眠りにつくことができるので、短い時間の睡眠でもいつもより疲れが取れやすいと言われています。
(授乳の合間の短い時間を家事に充てていると疲れやすくなります。ご注意くださいね。)
お母さんへのメリット③:自然な避妊効果が期待できる
頻繁に授乳をすることで排卵の再開を遅らせる=避妊効果があり、次の妊娠まで期間をあけることができます。
母乳だけで育てている女性の月経の再開が遅い傾向にあるのは、排卵の再開が遅れるためなんですね。
産後の頻回授乳による避妊は「LAM法」と呼ばれています。
ただし、夜間授乳がない・少ない、あるいは授乳回数が少ないと避妊効果が低くなる。
お母さんへのメリット④:産後ダイエットが有利になる
母乳を作り出すのにはエネルギーが必要なので、妊娠中に増えた体重が減りやすくなります。
具体的な報告では、
- 6ヶ月以上母乳育児をした女性
- 母乳育児期間が3ヵ月以下の女性
を比べると、産後6ヵ月時点での体重減少に2.0㎏の差があったそうです。
ただし、母乳だけで育てていると夜間授乳があったりお腹が空きやすくなるため間食をする機会(欲求も)が増えます。
この完食の機会にお菓子のようなハイカロリーはものを食べ続けると、当然ながら母乳育児をしていても太りますので注意してくださいね。
授乳期に必要な栄養・食事については別記事にまとめていますので、あわせてご覧ください。
産後ダイエットを急ぐあまり、食べる量を減らすことを徹底しすぎると、体調を崩すだけでなく、母乳分泌量が減るリスクがあるので注意が必要です。
授乳期の必要エネルギーは2050~2350kcal/日(年齢・活動量により変化)ですが、1500kcal/日以下を1週間以上続けると母乳分泌量が減ると知られています。
お母さんへのメリット⑤:様々な病気にかかるリスクが減り、健康を維持しやすくなる
母乳育児によって「お母さんの」病気を予防する効果があることはあまり知らない人が多いと思いますが、こんなにたくさんの病気のリスクを抑えてくれます。
- 閉経前の乳がんリスクが減る
【報告の例】
分娩後3~6ヶ月母乳育児をすると、乳がんになるリスクが15~46%減少。
赤ちゃん1人に対して24か月以上母乳育児をすると、6か月未満の母乳育児に比べて54%減少。 - 卵巣がんリスクが減る
【報告の例】
産後2ヶ月以上母乳育児をすると、しなかった女性に比べて卵巣がんリスクが20~25%減少。 - 子宮体がんリスクが減る
【報告の例】
最近30年間に授乳していた女性はリスクが42%減少。
30歳以降で授乳した女性はリスクが50%減少。 - 骨粗しょう症のリスクが減る
授乳中は一時的に3~7%骨密度が低下しますが、月経の回復と共に回復します。
母乳育児を行うことで「大腿骨頸部骨折」のリスクが減ることが複数の研究により明らかになっています。 - 関節リウマチのリスクが減る
【報告の例】
母乳育児期間が長くなるほどリスクが減少(特に13ヶ月以上で顕著)。 - 内臓脂肪が減少する
【報告の例】
母乳育児経験のない女性は、出産のたびに授乳していた女性よりも、内臓脂肪が28%・腹囲は6.5㎝多い。 - 糖尿病のリスクが減る
【報告の例】
母乳育児をしたことがない女性は、産後1~3ヵ月母乳だけで育てた女性に比べ、2型糖尿病になる確率が1.52倍。 - 心筋梗塞・高血圧のリスクが減る
【報告の例】
生涯で合計12か月以上母乳育児をすると、高血圧:リスクが12%低下、脂質異常症:リスクが19%低下、心血管疾患:リスクが9%低下する。
お母さんへのメリット⑥:いつでも手軽に授乳ができる
言うまでもなく、ミルクの場合は少なくとも以下の物が必要になります。
- 哺乳瓶
- 人工乳首
- お湯
- ミルク(粉・キューブ)
外出時にこれらを持って出かけるのは大変です。
それから、こんな手間もかかりますね。
- 「調乳」をする手間
- 哺乳びん類を洗浄する手間
- ミルクを買う手間
- 劣化した乳首を新しく買い直す手間
母乳育児は慣れてしまえば外出時でも必要なのは授乳ケープくらい、それすら必要ない人もたくさんいます。
とても手軽で簡単です。
お母さんへのメリット⑦:赤ちゃんが病気になりにくくなるため、仕事を休む日数が減る
「母乳で育てると赤ちゃんに免疫がつく」は母乳育児に関心がある人なら知っていることだと思いますが、具体的にどれくらい病気にかかりにくいかご存知でしょうか?
アメリカでの研究になりますが、赤ちゃんの疾病罹患率についてこんな報告があります。
- 母乳栄養:58%
- 人工栄養:90%
その差は30%以上です。
赤ちゃんの病気のためにお母さんが仕事を休むのが母乳栄養だと約1/2にまでなるとも。
お母さんへのメリット⑧:コストがかからず経済的
母乳そのものは当然ながらタダですが、赤ちゃんを「ミルクだけ」で育てるといくらかかるか想像できますか?
- 1年間で52.4本
- 金額にして13万7812円
これくらいのコストがかかるそうです。
母乳で育てることで、14万円弱もの金額が節約できるとしたら嬉しいですよね。
赤ちゃんへの母乳育児のメリット・利点5つ
次は「赤ちゃんにとっての」母乳育児のメリットについて5つのポイントでまとめていきます。
赤ちゃんにとっての母乳育児のメリットは「免疫がついて丈夫に育つ」以外にも実はたくさんあります。
赤ちゃんへのメリット①:予防接種効果が高まる
「母乳は赤ちゃんに免疫がつく」とよく言いますが、母乳を飲むことで受け身的に免疫を「もらえる」だけではないんです。
母乳育児をすることで予防接種の効果が高まる=赤ちゃん自身の体が自ら「能動的に」免疫を高めるという効果もあります。
赤ちゃんへのメリット②:乳幼児突然死症候群が減る
多くの人が知っているように、母乳育児をすることで乳幼児突然死症候群(SIDS)を減らすことができます。
具体的にどれくらい差があるかというと、人工栄養児は母乳栄養児に比べてリスクが1.6~2.1倍になると報告されています。
母乳を少しでも飲んでいる混合栄養児では、人工乳だけを飲んでいる赤ちゃんに比べてリスクは6割減少します。
少しでも母乳を与えることで乳幼児突然死症候群のリスクを減らすことができるというのは、とても大きなメリットですね。
2004年のアメリカでの報告では、一度も母乳を飲まなかった赤ちゃんは母乳で育てられた赤ちゃんに比べて20%死亡率が増加すると報告されています。
「日本は国民皆保険+子どもは低価格で医療機関受診ができる」という違いがあるとはいえ、先進国アメリカでこれだけの差があるんですね。
赤ちゃんへのメリット③:いろいろな病気を予防する効果がある
母乳育児をすることで病気にかかりにくくなることは何となく知っている人も多いと思いますが、具体的にどんな病気にかかりにくくなるかご存知でしょうか?
様々な研究から、以下のような病気を予防する効果があることが分かっています。
- 下痢・消化器感染症
母乳育児は下痢の原因となるロタウイルス・カンピロバクター・病原性大腸菌の感染を減少させる効果があります。
生後13週間以上母乳育児をすると、授乳をやめた後も7歳まで消化器感染症を減らす効果があると報告されています。
(母乳育児期間が13週間より短いと明かな効果はなかった) - 中耳炎
母乳育児をすることで以下のような効果があることが分かっています。
中耳炎へのかかりにくくなる・繰り返しにくい・中耳炎にかかる期間が短くなる。 - 気道感染症(いわゆる風邪や肺炎など)
人工栄養児は母乳栄養児に比べて乳児の肺炎での入院率が17倍になる。
(生後3か月以内に限ると人工栄養児の肺炎での入院率は61倍) - 尿路感染症
- 糖尿病
- 小児がん
6ヶ月以上母乳育児をする事で、悪性リンパ腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病のリスクを低下させる効果がある。
赤ちゃんへのメリット④:IQが高くなる
複数の研究から母乳で育った人の方が人工栄養で育った人よりIQ(認知能力)が高いことが分かっています。
これには、母乳中に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)・エイコサペンタエン酸(EPA)が関係すると推測されています。
26歳時の教育レベル・53歳時の認知能力が上がるという研究結果もあります。
赤ちゃんへのメリット⑤:災害時でも栄養を摂ることができる
災害に遭った時、ミルクの場合は少なくとも以下の物が必要になります。
- ミルクそのもの(粉・キューブ)
- 清潔な水
- 水を70度以上に温める設備
- 哺乳瓶・乳首
- 哺乳瓶などを洗浄するための水
母乳栄養は道具が何もなくても衛生的な栄養を赤ちゃんに与えることができるので、災害時にもとても役立ちます。
母乳を飲むことで避難所で蔓延する感染症から赤ちゃんを守ってくれる効果も期待できます。
さらに、急な環境変化で不安な赤ちゃんにとって大きな安心材料・心の支えにもなります。
災害時には
- 急な環境変化によるお母さんのストレス
- 授乳場所が確保できないことによる授乳回数の減少
などで母乳分泌量が一時的に減ることがありますが、多くの場合は頻回授乳を続けていれば分泌量は元に戻りますし、大きな安心材料になりますね。
母乳だけで育てることが「すべての親子に最適」というわけではありません
「母乳って赤ちゃんに免疫がつくだけじゃなくて、こんなにたくさんメリットがあるんだよ!」ということを伝えたくてこのページはまとめています。
でも、だからといってすべての親子にとって「母乳だけ」が一番いいわけではないことも頭の片隅に置いておいてください。
例を挙げ始めればキリがありませんが、例えばこんな理由で母乳だけ・母乳メインで育てるのが難しい人もいます。
- 出産時に出血多量だった影響で、十分な母乳が出ない。
- 赤ちゃんが低血糖を起こすリスクがある場合には、最初は母乳が出るようになるのを待てずミルクが必要な場合もある。
- 赤ちゃんがおっぱいにうまく吸い付くことがでないために直接おっぱいから飲み取りにくく、体重があまり増えない。
- 赤ちゃん以外の他の家族に濃厚なケアが必要で、お母さんが常に赤ちゃんと一緒にいられない。
健全に母乳だけor母乳メインを目指せそうか、信頼できる母乳育児支援者に相談しながら進めていただけたらと思います。
まとめ
お母さんと赤ちゃんへの母乳のメリットについてまとめました。
【お母さんへの母乳育児のメリット】
- 産後の出血量が少なくなる
- 授乳ホルモンの影響でリラックスしやすくなる
- 自然な避妊効果が期待できる
- 産後ダイエットが有利になる
- 様々な病気にかかるリスクが減り、健康を維持しやすくなる
- いつでも手軽に授乳ができる
- 赤ちゃんが病気になりにくくなるため、仕事を休む日数が減る
- コストがかからず経済的
【赤ちゃんへの母乳育児のメリット】
- 予防接種効果が高まる
- 乳幼児突然死症候群が減る
- いろいろな病気を予防する効果がある
- IQが高くなる
- 災害時でも栄養を摂ることができる
母乳育児を軌道に乗せるには様々なコツがあり、それを出産前までに知っておくと大きな強みになりますので、ぜひ以下の記事もあわせてご覧ください。
お母さん・お父さん向けにはこちらの本が読みやすくておすすめです。