帝王切開術後などで母子分離する時の母乳育児の進め方5つのポイント

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助産師16年&母乳育児支援者&一児の母。助産師の仕事の中でも特に母乳育児支援が好きで、たくさんの母子の母乳ライフのお手伝いをしてきました。 「『母乳だけ』も混合栄養も全部母乳育児」という思いで、母乳育児を科学的な視点+リアル感覚の両方から解説しています。趣味は子ども服作り。

先日Twitterでこんな質問↓をいただきました。

上記のツイートのように、お母さんの産後の経過は問題ないけど、

  • 呼吸が落ち着かない、黄疸など、赤ちゃんの具合が芳しくなかったり
  • 病院の方針で帝王切開後の赤ちゃんは全員、数時間~数日間、保育器やNICU(新生児集中治療室)で管理する

場合もありますよね。

ですから今回は、母子分離になった時の母乳育児の進め方についてまとめようと思います。

この記事は「母乳の基礎量を決めるのは出産から約1週間」に書いてある知識を前提としていますので、未読の方は先に読んでからこの記事を読み進めてくださいね。

この記事は以下のような場合を想定して、母子分離になった時の母乳育児の進め方について5つのポイントでまとめていきます。

【この記事で想定している状況】
  1. 正期産(妊娠37週~42週未満)で出産
  2. 低出生体重児(2500g未満)ではない
  3. お母さんの産後の経過は順調
  4. 赤ちゃんに深刻な異常(先天的な病気など)がある訳ではないが、一時的に保育器やNICUで管理する場合

帝王切開術後などで母子分離する時の母乳育児の進め方5つのポイント

ポイント①:保育器・NICU管理中でも「授乳はOK」なら、赤ちゃんが飲みたそうなタイミングで昼夜を問わず呼んでもらう。

もし赤ちゃんがお母さんのベッドとは離れた場所で診てもらう必要があったとしても、「授乳の時だけは保育器から出てもOK」という場合もあります。(〇分までと制限付きのこともあります。授乳の可否と併せて小児科の主治医に是非確認してみてください。)

母乳の基礎量を決めるのは出産から約1週間」で解説しているように、母乳育児を希望する場合、母乳の基礎量が決まる産後最初の1週間に

  1. 産後すぐから
  2. 昼夜を問わず頻回に(少なくとも2~3時間毎に)
  3. 痛くないやり方で
  4. 授乳、搾乳すること

が非常に重要です。

この点を考えると、ツイ主のライカさんのように「泣いたらすぐ行くんで呼んでください」というリクエストは非常に理に適っています。

あえて言うなら、「泣いてから」の授乳だと赤ちゃんが怒り狂って授乳に集中できない可能性あるので、

 

「泣く前にモゾモゾしたり目を開けたりして飲みたそうな雰囲気になったら呼んで下さい!」

とリクエストしておくと、なおベターだと思います。

ミカ子
お母さんの病室から赤ちゃんの元に移動するタイムラグもありますし、早めに呼んでもらった方が2人とも落ち着いて授乳できると思いますよ。

ポイント②:直接授乳に際しては、スタッフに介助をリクエストしてみる。

もし小児科医から「直接授乳OK」の許可が出ていて、赤ちゃんの飲みたいタイミングで授乳できる場合は、できることならスタッフに授乳の見守りや手伝いをリクエストするといいと思います。

なぜなら、

  • 生まれてすぐの赤ちゃんとお母さんは授乳に不慣れなので、吸着が浅くなって乳首に傷ができたり
  • 赤ちゃんが眠りがちになって思うように授乳ができなかったり

する場合もあるからです。

このような状況に、産後すぐのお母さん一人で対応するのは大変ですよね。

言い訳がましいようですが、産科もNICUも非常に多忙なので、スタッフにお手伝いしたい気持ちがあっても、付き添えない場合もあります。

…が、奇跡的に病棟が落ち着いている時には授乳介助スタッフを配置してくれる可能性もあるので、リクエストを出してみる価値はあると思います。

もし、授乳を手伝ってくれるスタッフがいない場合は、授乳のコツをまとめた「母乳が出ない!乳首が痛い!を解決する、10個の授乳のコツ」が役立つと思います。

ポイント③:直接授乳不可の場合は、産後なるべく早いタイミングから搾乳器や手を使って乳頭刺激をする。

母子分離状態であっても、赤ちゃんが授乳するタイミングで呼んでもらって直接授乳できるのがベストなのは言うまでもありませんが、

  • お母さんが帝王切開術後で自由に動けない
  • 経腟分娩後で自力で動くことはできるけど、直接授乳の許可が出ない

などの理由で、直接授乳ができない期間もありますよね。

母子分離状態で直接授乳ができない場合はどうしたらいいでしょうか?

教科書的にはこう記されています。

遅くとも分娩後6時間以内に搾乳を開始し、24時間に少なくとも7回、15~20分の搾乳をする。
1回に長い時間をかけるより、短くても頻繁に搾乳する方が効果的。
(「改訂第2版 よくわかる母乳育児」より)

これ⇧を読んで、「やっとお産が終わったばかりなのに、スパルタすぎ!」と感じる人もいるかもしれませんね。

帝王切開術後であったり思いがけない母子分離だったりすると、例え母乳育児を希望していても気持ちと体が追い付かず、母乳のことは後回しになりがちです。

病院としても、お母さんと赤ちゃんの健康状態を維持・促進することを最優先にすることが多いので、ご希望がないと介入が後手になることがよくあるのが現実です。

ただ「母乳の基礎量を決めるのは出産から約1週間」でも書いているように、母乳の基礎量を決めるカギは出産直後~産後約1週間にありますので、「母乳をあげたい」という希望を持っている場合は、

  1. 遅くとも分娩後6時間以内に搾乳を開始
  2. 24時間に少なくとも7回
  3. 1回につき15~20分の搾乳をする

ことが大事です。

ミカ子
直接授乳ができなくても、痛みのない適切な搾乳は、母乳量を増やすのに有効です。

病院では貸し出し用の搾乳器を常備していることも多いので、例え母乳が出ていなくても、搾乳器を借りて乳頭刺激をするのは、のちのちの母乳量を増やすのに役立ちます。

搾乳方法については別の記事にまとめていますので、参考にしてくださいね。

  1. 手での搾乳方法
  2. 搾乳器での搾乳方法

搾乳といっても、最初の数時間~数日は滲む程度しか母乳が出ないのが普通ですので、最初は手や搾乳器で乳頭刺激だけする(乳汁は採取しない)ことになるかもしれません。

でも、もし病院の管理体制として許されるのであれば、手で絞ってにじみ出てきた初乳を1mlのシリンジ(針の付いていない注射器)に吸い取って赤ちゃんに届けると、母子分離でも貴重な初乳を飲ませてあげることができます。

ポイント④:搾乳量は赤ちゃんの哺乳量に合わせず、絞れるだけ絞る。

搾乳して哺乳瓶などに採取できる位の量になってきた時、搾乳する量の目安はどのように考えればいいでしょうか?

結論だけ言うと、

ミカ子
15~20分搾乳して、搾れる分は全部採る

となります。

スタッフの中には時々「赤ちゃんは今10ml飲んでるので、その量に合わせてあまり搾り過ぎないようにしてくださいね」と、良かれと思って言う人もいます。

…が!「母乳の基礎量を決めるのは出産から約1週間」に書いてある通り、最初の1週間で母乳の基礎量が決まってしまいます。

最初の1週間で母乳の出し惜しみをすると、後になって赤ちゃんが飲む量が増えたからと言って母乳量を増やすのはけっこう大変です。(あとから母乳量を増やすこともできますが、最初の1週間に比べると大変です)

赤ちゃんが現在飲んでいる量に関わらず15~20分で絞れる母乳は全部絞り、産後1週間経つ頃には1日500mlくらい搾乳できるようになっていると、のちのち赤ちゃんが飲む量が増えた時にもすぐに対応でき、困ることが少ないと思います。

ポイント⑤:赤ちゃんの写真・動画を観たり、赤ちゃんの匂いが付いた服をそばに置いて搾乳する。

本来授乳は赤ちゃんとお母さんがピッタリ密着してするものですね。

ピッタリ密着してスキンシップをしながらの授乳は、母乳を勢いよく押し出す「オキシトシン」というホルモンを分泌させるので、よりたくさんの母乳を飲ませてあげるのに効率的です。

でも母子分離状態だと赤ちゃんと密着して搾乳することはできません。

そういう状況であっても、赤ちゃんの写真や動画を観たり、赤ちゃんの匂いが付いたものを嗅ぐことでオキシトシンの分泌が促され、搾乳量を増やすことができます。

赤ちゃんの画像をスライドショーで観ながら、あるいは動画を観ながら

「はぁ~~( *´艸`)かわいいぃぃ~♪」

と感じながら搾乳するの、おすすめですよ。

まとめ

帝王切開術後などで、お母さんの産後の経過は問題ないけど、一時的に母子分離状態で管理される場合の母乳育児の進め方のポイント5つについてまとめてきました。

【産後の母体経過は順調だけど、赤ちゃんと離れた時の母乳育児の進め方のポイント】
  1. 保育器・NICU管理中でも「授乳はOK」なら、赤ちゃんが飲みたそうなタイミングで昼夜を問わず呼んでもらう。
  2. 直接授乳に際しては、スタッフに介助をリクエストしてみる。
  3. 帝王切開術後・病院のルール・赤ちゃんの状態等で直接授乳不可の場合は、産後なるべく早いタイミングから搾乳器や手を使って乳頭刺激をする。
  4. 搾乳量は赤ちゃんの哺乳量に合わせず、絞れるだけ絞る。
  5. 搾乳する時は赤ちゃんの写真・動画を観たり、赤ちゃんの匂いが付いた服をそばに置いて搾乳する。

お母さんの産後の経過に異常がある場合は、このやり方は通用しないでしょう。

また、医学的には正常な経過であっても、長い長い分娩経過で心身ともに疲れ切っている場合にも今回まとめたやり方が通用しない場合もあるかと思いますが、基本的な考え方はこうだ、ということをご理解いただけたらと思います。

さいごに。
記事作成にあたって、ツイートの引用を快諾して下さったライカさんに感謝します。