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先日、何気なくこのツイート↓をしたところ、けっこう大きな反響をいただきました。
産後9日位からは、母乳は
出した分だけ新しく作る
という「完全受注生産(在庫ゼロ)」になっていきます。
ですから引用元のように授乳や搾乳間隔が長くなると母乳量は減ります。
すぐに再び頻回授乳すれば、また母乳量は増えるのが通常ですが、その間は赤ちゃんもぐずるだろうし結構大変です。 https://t.co/PyWuXBh6t6
— ミカ子 (@midwife_kaasan) 2019年5月19日
このツイートの数日後に、これまた何気なく質問募集をしたところ、
「産後9日目頃から『完全受注生産』になることを、妊娠中に知っておきたかった!!」
というご意見をたくさんいただきました。
私にとっては当たり前のことだったので驚いたのと同時に、意識や理解に乖離があることに気付けていなかった…と反省しきりでした。
そんな訳で、「なるべく分かりやすい表現で母乳が作られ・出る仕組みを解説したい!」と思い、前回の「母乳の基礎量を決めるのは出産から約1週間」では産後最初の1週間の母乳が出る仕組みについて解説しました。
今回は、最初の1週間で基礎量が決まった後の、産後9日目頃から母乳量が決まる仕組みについて解説していきたいと思います。
- 母乳の基礎量が決まった産後9日目頃からの母乳が作られる仕組み
- 「完全受注生産システム」になった産後9日目頃から、母乳量を維持するために必要なこと
産後9日目頃からの母乳量は「出した分だけ作る」になる【母乳が出なくなった!にならないために】
ざっくりと産後最初の1週間で母乳の基礎量が決まる話のまとめ
本題に入る前に前回の復習をサラッと。
プロゲステロンというホルモンによって妊娠中は母乳がジャージャー出ることはありません。
しかし、出産が終わり胎盤が体外に出ることで、母乳生産にストッパーを掛けていたホルモンたち(プロゲステロン、hPLなど)がいなくなります。
胎盤が出た後、母乳を作るのにはプロラクチンというホルモンの働きが重要ですが、ストッパーホルモン(プロゲステロン、hPLなど)がいなくなっただけでは母乳はたくさん出るようになりません。
この理由は、授乳・搾乳などの乳頭刺激がなければ、プロラクチンは出産終了とともに急激に分泌が低下していくからです。
プロラクチンの激減を防ぎ、母乳の基礎量をアップするためには、
- 分娩直後から
- 昼夜を問わず
- 頻繁に(1~2時間毎もザラ)
- 深い吸着で乳頭が痛くならないように
授乳や搾乳をすることが必要です。
母乳の基礎量が決まった産後9日目頃からは、出したら出した分だけ新しく母乳を作る「完全受注生産システム」になる
さて、ここからが今回の本題。
「最初の1週間で母乳の基礎量が決まったら、もう『母乳が出る体』だから安心~♪」…なんてことは「ありません」!
母乳の基礎量が決まった産後9日目頃からは、母乳を出した分だけ新しく作る『完全受注生産システム』に移行していきます。
母乳工場は、在庫を一切抱えない、超優秀な生産ラインなんですね。
この「完全受注生産システム」のことを、教科書的には「オートクリンコントロール」と呼んでいます。(覚えなくていいけど!)
ただ、裏を返すと、こういうリスクもはらんでいることになります。
- 授乳をミルクで代替したり、ミルクを足し過ぎたりすると、母乳を飲み取る量が少なくなるので、母乳生産量も減る。
- 授乳間隔がいつもより長くなったり、搾乳量が減ると、分泌される母乳量は容赦なく減る。
母乳で育てたいと思っているお母さんの体でこれが起こってしまうと、取り戻すのが大変です。(完全受注生産システムを逆手に取って、母乳量を復活させる事は可能ですが、それは別の機会に解説しますね)
「完全受注生産システム」になる産後9日目頃以降、母乳量を維持するためにはどんなことが具体的に大事か、次の項で解説していきますね。
産後9日目以降も母乳分泌を維持するために必要な具体的な行動
「母乳は出したら出した分だけ新しく作る」という完全受注生産システムを攻略するために、私が大事だと思う具体的な注意点を5つ挙げてみます。
その①:忙しい時ほど、来客中こそ、「いつも通り頻繁に」授乳する。
飲んだら飲んだ分だけ母乳は新しく作られる訳ですから、母乳がたくさん出るようになった後も油断せず、赤ちゃんの欲求に応じて頻繁に授乳することが最も重要です。
来客があると、おしゃべりに夢中になって授乳間隔があいてしまったり、お客さんの好奇心でミルクを与えることもありますが、それをやると母乳生産量は減ってしまうので、あくまでも「授乳の頻度はいつも通り」にするのが大事です。
「お客さんがやってみたいから」という理由で、お母さんが望んでいないのにミルクを使うのは言語道断です。
その②:忙しい時ほど、来客中こそ、「深い吸着で」授乳する。
おしゃべりしながら・お客さんに気を遣いながらの授乳だと、いつもより赤ちゃんの吸い付きが浅くなることもよくあります。
吸着が浅くなると母乳を効率よく飲み取れなくなるので、出る母乳量は減ります。
浅い吸着になったことによって出る母乳量が減ると、当然新しく作られる母乳量も減るので、深い吸着をしっかり意識して授乳を続けましょう。
産後1~2ヶ月は静かな環境で集中しないと深い吸着にできない人も多いので、来客中であっても別室で授乳するなど注意が必要です。
その③:来客を極限まで減らす。
「赤ちゃんの顔を見に来たお客様に遠慮して別室に移動しての授乳ができず、授乳間隔が空いてしまう→母乳量が減る」ことは、本当に!!よくあります。
まだうまく授乳できない産後早期は、授乳ケープを使っての授乳ではなく、静かな環境で集中して授乳したい人も多いと思いますので、体調が戻って授乳も軌道に乗るまでは、面会する人を最低限にする事はとても重要です。
疲れると母乳が出なくなる人も多いですしね。
その④:来客の取捨選択に当たっては、パートナーに協力してもらう。
そもそも、
- 目の前にいたら授乳できない間柄の人
- 「ちょっと隣の部屋で授乳してくるね」
- 「ちょっと昼寝したいから、その間赤ちゃん抱いといて」
と気兼ねなく言えない人の面会は、産後すぐの時期は避けた方が無難だと思います。
特に義父母の面会は断りにくいですし、来たら来たで無下にはできないので困りものです。
ここはやはり夫・パートナーの出番です。
- 「体調が落ち着いてからゆっくり顔見てもらいたいから、ちょっと待っててくれる?」
- 「まだ疲れやすいから、午前中だけにしてくれる?」
など、お父さんに盾になってもらってくださいね。
その⑤:気軽にミルクを使わない。
もしあなたが混合栄養希望なら、母乳育児が軌道に乗ってきた時点でミルクを与えてみるのはもちろん大丈夫です。
ただお母さんが「母乳だけで育てたい」「母乳メインで育てたい」と考えているなら、ミルクは必要最低限にする必要があります。
ミルクを飲み過ぎて赤ちゃんが長く眠ってしまえば、その分授乳機会は減り、当然母乳量は減っていきます。
よく聞くのが「パパも育児参加したいからミルクをあげたがる」という声。
「ミルクを与える」という行為は育児の象徴的行動なのでやりたがる人が多いんだと想像します。
でも育児は他にも、夜中の抱っこで寝かしつけ、オムツ交換などもありますし、何よりお母さんが授乳・育児に集中するために「家事を一手に引き受けてくれる」のが一番助かる場合も多々あります。
子育て初期にお父さんが後方支援に回るのは仕方のないことです。
花形の役割ができないガッカリはあるかもしれませんが、そこのところを理解してもらえるように、2人でよく話し合いをするといいと思います。
「完全受注生産システム」はずっと続くので、2歳になっても5歳になっても母乳育児を続けることは可能です。
「母乳を出したら出した分だけ新しく作る」という完全受注生産システムは産後9日目頃以降、授乳を続けている限りず~っと続きます。
ですから、子どもが2歳になっても5歳になっても、例え7歳になっても、母乳を飲み取っている限り、乳汁は出てきます。
「子どもが〇歳を過ぎたら母乳が水になる」「薄まって栄養がなくなる」なんていうことはなく、何年経っても栄養も免疫物質もしっかり含まれています。
母乳をいつまで続けるか?についてはこちらのページで詳しく解説しています。
まとめ
- 産後9日目頃からの母乳が作られる仕組み「完全受注生産システム」について
- 「完全受注生産システム」になった産後9日目頃から、母乳量を維持するために必要な5つのこと
についてまとめてきました。
母乳が作られる仕組みをお母さん自身が知っておくと、対策を立てやすくなって、不意に母乳量が激減することを防ぐことができると思います。
これより前の時期、母乳の基礎量が決まる産後約1週間の母乳が作られる仕組みについても解説していますので、未読の方は併せてどうぞ!
新しく母乳が作られるということです。