仕事復帰後(復職後)の母乳:授乳・搾乳はどうする?

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こんにちは!ミカ子(@midwife_kaasan)です。

今回は職場復帰する時の搾乳についてまとめます。

特に、まだ授乳が不可欠な生後12ヶ月未満の赤ちゃんを想定して書きますね。

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【仕事復帰後の母乳育児】授乳・搾乳はどうする?

授乳と搾乳のタイミング

母乳育児を続けながら職場復帰することは決めたけど、いつ授乳や搾乳をすればいいのでしょう?

これはすべての人に当てはまる答えはありません。

一口に赤ちゃんと言っても、「栄養の大半は食事で摂れているけど、まだ飲みたい気分~♪」という赤ちゃんもいれば、「母乳がメインの栄養源で生きていくのに必要不可欠!」という赤ちゃんもいて、それぞれの赤ちゃんに同じやり方は通用しないからです。

職場復帰をしても必ずしも搾乳が必要になる場合ばかりではありませんので、自分たち親子に合った方法を見つけてくださいね。

ここでは、

  1. メインの栄養源が食事の赤ちゃん
  2. メインの栄養源が母乳の赤ちゃん

の場合に分けて解説しますね。
(栄養源が食事と栄養源の半々かな~という場合は、メインの栄養源が母乳の場合に当てはめた方が近い答えになると思います。)

補完食(離乳食)を良く食べてくれる1歳間近の赤ちゃんの場合

栄養の大半を食事で摂れている赤ちゃんで、赤ちゃん自身もあまり日中に母乳を欲しがらない場合だったら…

補完食(離乳食)を良く食べてくれる1歳間近の赤ちゃんの場合
  • 朝出勤前に授乳する。
  • 仕事中は搾乳が必要ないか、したとしても1回程度の排乳(絞った母乳を破棄すること)でいいかもしれない。
  • 帰宅直後に授乳する。
  • 夜間は赤ちゃんが欲しがれば授乳する。

こんな感じにできるかもしれません。

メインの栄養源が母乳の赤ちゃんの場合

生後6ヵ月未満で補完食(離乳食)が始まっていない赤ちゃんや、補完食(離乳食)をまだあまり食べなくてメインの栄養源が母乳の場合だったら…

メインの栄養源が母乳の赤ちゃんの場合
  • 朝出勤前に授乳する。
  • 仕事中も3~4時間毎に搾乳する。
    (たいていは昼休み+15~16時時頃の2回になる人が多い)
  • 帰宅直後に授乳する。
  • 夜間は赤ちゃんがほしがるだけ授乳する。

こんな感じになることが多いかと思います。

次は、職場復帰にあたって搾乳が必要な場合の6つの手順についてまとめていきます。

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手順①:職場で搾乳できる場所があるか確認する。

あなたは搾乳が必要そうかどうか分かりましたか?

仕事中に搾乳が必要なら、まずは復帰の前に仕事中に搾乳できるよう職場の人に確認します。

一般的な職場では、気軽に搾乳できる環境がない場合も多いと思います。

職場復帰にあたっては、復帰の時期を相談する際に「搾乳場所」「搾乳するための時間」「搾乳の保存場所」について相談・交渉しておきましょう

  1. 搾乳場所
    プライバシーを守れる場所を使わせてもらえるように。
    例えば、空いている会議室や、ロッカールームで授乳ケープをして搾乳できないか相談してみる。
  2. 搾乳するための時間
    搾乳するためには、仕事を一時中断しなければなりません。
    搾乳のための休憩時間(15~20分程度)をもらえるように相談・交渉しましょう。
    タバコ休憩をしている人がいる職場だったら交渉しやすいですね。
    喫煙のための休憩が許されて、搾乳のための休憩が許可されないのはおかしいですから。
  3. 搾乳の保存場所
    搾乳した母乳は適切に保存することが重要です。
    母乳パック(後述します)に入れて密閉した母乳は、冷蔵庫か冷凍庫に入れておく必要があります。
    お昼に搾乳した母乳を常温のまま持ち帰るのは、母乳中で細菌が増殖するリスクが高いので避けましょう。
    母乳を保存させてもらえる冷蔵庫があるか確認するとともに、誰かが間違って母乳パックに触れることがないように、専用のタッパーなどを用意するといいと思います。

お母さんにとっては授乳や搾乳は当たり前のことだし、子どものために絶対必要と思えることですが、世間ではそのように思われていないこともあるようです。

「搾乳のための場所・時間、保存場所が欲しい」と言うといい顔をされないこともあるかもしれません。

でも、そういう人たちの多くは母乳育児についての知識がないんだと思うんです。

「職場復帰するんだからミルクあげとけばいいじゃん」と安易に考える人も多いようです。

あなたがなぜ母乳育児を続けたいのか、仕事中に搾乳が必要なのか、きちんと説明して相談・交渉してくださいね。

手順②:搾乳場所・保存場所がない時はどうするか?

相談・交渉しても搾乳場所や保存場所が確保できない場合もあるかと思います。

そういう場合はどうすればいいかということについても少し触れておきます。

搾乳場所がない場合

例えば、あなたがメインの栄養源が母乳の赤ちゃんのお母さんで、仕事復帰前は日中も2~3時間毎に授乳していたとしたら…

搾乳場所がないからと言って、仕事中に1回も搾乳しないでいたら、おっぱいがガチガチに張って痛くなったり、仕事中に母乳が漏れ出てきたり、乳腺炎などの乳房トラブルを起こす可能性がとても高くなります。

どうしても搾乳ができない場合は、トイレで排乳しましょう

排乳というのは、コップでもタオルでも母乳を受けられるものを片手に持って、搾乳した母乳をそこに絞り出して廃棄することを言います。

排乳しなければお母さんの体調に悪影響が出るとはいえ、赤ちゃんにとっては宝の母乳をそんな風に扱うなんて…しかもトイレでするなんて…と本当に心が痛みます。

保存場所がない場合

職場に冷蔵庫がない場合は、あまりおすすめできる方法ではありませんが、「クーラーボックスを使う」というのも一応選択肢に入るかと思います。

クーラーボックスをあまりオススメできない理由は、「温度管理が難しい」からです。

一般的に冷蔵庫は5℃程度に保たれていますが、クーラーボックス内で5℃の温度を帰宅時まで保持するには、かなりたくさんの保冷剤が必要になるかと思います。

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手順③:保育園への搾乳の取り扱いが可能か確認する

そもそも保育園が搾乳を取り扱ってくれなければ、日中赤ちゃんに母乳を与えることができません。

預け先となる保育園に搾乳を与えてもらえるか確認しましょう。

でももし、あなたの住む地域が保育園激戦区でなければ…

「搾乳した母乳を取り扱ってくれるか?」は、保育園選びの重要な条件の一つに入ると思います。

手順④:搾乳に必要なモノを準備する。

  1. 母乳パック
    職場で搾乳する場合はこれは不可欠です。
    キレイに洗浄された哺乳瓶・コップなどを使って搾乳した母乳を、母乳パックの中に入れて空気を抜いて密閉して使います。

  2. 搾乳器
    これは必ずしも必要ではありません。
    少しでも手軽に搾乳したい人、1日の搾乳回数が多い人にはオススメです。
    搾乳器も哺乳瓶と同じように洗浄が必要になります。
    搾乳器はいろいろなメーカーから出ていますが、多くの病院で使っている搾乳器はMedela(メデラ)のものです。

    搾乳器で痛い!出ない!にならない9つのコツ

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  3. 洗浄された哺乳瓶・コップ

    母乳パックに直接搾乳すると、パックの淵に乳頭や指先が当たって不衛生になるので、洗浄した哺乳瓶やコップに一度搾乳して、それから母乳パックに移します。
    自宅で洗浄した哺乳瓶・コップは搾乳する回数分、ジップロックなど清潔で密閉できる袋に入れて職場に持参しましょう。

  4. 母乳を職場→自宅に移動するための保冷バッグ・保冷剤
    職場の冷蔵庫で低温保存していても、自宅に持ち帰る途中に温度が上がってしまったら、再冷蔵・再冷凍することはできません。
    (そのまま搾乳を温めて使うことはできます)
    移送のための保冷バッグと保冷剤は必須です。特に夏場は保冷剤を多めに用意しましょう。
    保冷剤の用意が難しい場合は、コストはかかりますが、叩くと冷たくなるタイプの保冷剤がおすすめ。

手順⑤:職場復帰の前に赤ちゃんにちゃんとお話しする。

職場復帰をすることになったら、日中にお母さんと離れる必要があること、その間お母さんはどこで何をしているのか、その間赤ちゃんはどこで何をするのか、仕事の前後にはたくさんおっぱいを飲めること…などなどを、是非お話ししてあげてください。

科学的根拠はありませんが、1歳にならない赤ちゃんでも、大人の、特に普段お世話をしているお母さんの話すことは理解できると思います。

理解までいかなくても、「きちんと説明された」ということは分かると思います。

小さくても幼くても、1人の人間として扱って、これから起こることをきちんと説明してあげると、赤ちゃんもいくらか納得できるんじゃないかと私は考えています。

手順⑥:哺乳瓶の練習

「母乳大好き!」で育ってきた赤ちゃんに急に哺乳瓶授乳をしようと思っても、最初は拒否されるかもしれません。

お母さんの乳首と、人工乳首の感覚はかなり違いますからね…

補完食(離乳食)が始まる前の生後早期に職場復帰を検討しているなら、母乳育児が軌道に乗ったら(人によりますが、生後2~3ヵ月頃)1日1回くらいの頻度で哺乳瓶授乳の練習をしておいてもいいかもしれません。

普段母乳をあげているお母さんが哺乳瓶を持つとより激しく拒否することが多いので、お父さんや家族に哺乳瓶授乳の練習を担ってもらうといいと思います

万が一、それでも哺乳瓶を受け付けなかったら…

かなり不安な気持ちになりますよね。

そういう時は、赤ちゃんをあずける保育園に一度相談してみてください。

おそらく、「なんとかなるから大丈夫ですよー!」と言ってもらえると思います。

赤ちゃんもどうにもおなかが空けば飲むはずですし、保育士の先生たちは保育のプロなので、何とかうまくやってくれます。

哺乳瓶拒否が無用に長引かないようにするためにも、さっきお話した「赤ちゃんにきちんとお話しする」というプロセスを大事にしてほしいなと思います。

「赤ちゃんに納得してもらう」というのは、大人が思っている以上に大事なことです。

母乳はいつまであげる?

そもそも母乳はいつまで続ければいいんでしょうか?

結論から言えば、「この時期が正解!」という答えはありません。

子どもとお母さんの両方が納得できるタイミング・方法で、自然に母乳育児を卒業(=卒乳)できると一番いいと思います。

その時期が2歳前後の親子もいれば、小学生になっても授乳を楽しむ親子もいます。

授乳(母乳)はいつまで?卒乳のタイミングや時期を決めるのは自分!

2018年5月14日

医学的な観点からは、WHO(世界保健機構)やアメリカ小児科学会が、「最初の6ヵ月は母乳だけで、その後は補完食(離乳食)を与えながら最低でも2年の授乳を。2歳以降は子どもがほしがる限り母乳を与える」と推奨しています。

「最低2年は」ということなので、少なくとも1歳のお誕生日前の赤ちゃんが、お母さんの職場復帰を機に断乳(急に母乳をやめること)するのは理想としては避けた方がいいのかなと思います。

たまに、1歳くらいでも食事が十分とれて、赤ちゃんの方から「もう飲みたくないよ~」あるいは「授乳は寝る時だけ」となる場合もありますが、一般的には搾乳しながらの職場復帰を検討するのがいいと思います。

まとめ

出産後に職場復帰をする場合の授乳・搾乳についてまとめました。

このページを開いてくださった、搾乳しながら職場復帰を検討しているお母さんに敬意を表します。

実際にどのように乳房から母乳を絞るか、搾乳の保存方法と保存期間については以下の記事をご覧くださいね。

母乳が痛みなくたくさん絞れる手での搾乳方法:5つのやり方のコツ

2018年8月18日

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搾乳の冷凍・冷蔵保存方法と保存期間

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