喫煙=母乳(授乳)ダメ「じゃない」よ!

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助産師&母乳育児支援者&一児の母。 「ちょっとの勉強で、妊娠・出産・母乳・育児はもっとラクチンできる」「『母乳だけ』も混合栄養も全部母乳育児」という思いで、科学的な視点+リアル感覚の両方から周産期のことを解説しています。 個別のご相談はこちらから →https://baobabu.online/

好みページでは、「たばこ(喫煙)と母乳育児」について、

  1. 喫煙が子どもにもたらす具体的な影響
  2. どうしても喫煙をする場合の注意点

についてまとめます。

結論だけを言えば、母乳育児中のタバコ問題の基本大原則は、この2つです。

母乳育児とタバコ(喫煙)の基本大原則
  1. できるだけ禁煙する、あるいはできる限り本数を減らす。
  2. どうしても喫煙する場合は、その影響が最小限になるように注意する。(詳細は後述しますね)

タバコは依存性がありますから、やめたい気持ちがあっても、自分の意志だけではどうにもならないこともありますよね。

妊娠中はどうにか禁煙を頑張れた人でも、出産を機に喫煙を再開する可能性が高いことが知られています。

「タバコはやめられない。でも母乳をあげたい…」と心が揺れている方に是非知っておいて欲しい情報をまとめていきます。

それでは、詳しく解説していきますね。

授乳(母乳育児)への喫煙の具体的な影響5つ

「タバコを吸わない方がいいなんて、言われなくても分かってる!」と思われるかもしれませんが、具体的にどんな影響があるか知っていますか?

ここではよく指摘される影響つについてまとめます。

引用・参考図書

こちらの項目では以下の書籍を引用・参考にしています。

  1. 大山牧子:「NICUスタッフのための母乳育児支援ハンドブック―あなたのなぜ?に答える母乳のはなし」、MCメディカ出版、2004
  2. ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル:「改訂版 だれでもできる母乳育児」、MCメディカ出版、2006
  3. 水野克己・水野紀子・瀬尾智子:「改訂第2版 よくわかる母乳育児」、へるす出版、2017

喫煙の影響①:乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが高くなる。

乳幼児突然死症候群(SIDS)とは
  • 何の予兆や既往歴もないまま乳幼児が死に至る原因のわからない病気。
  • 平成28年度には109名の赤ちゃんがSIDSで亡くなっており、乳児期の死亡原因としては第3位。
    厚生労働省HPより

出産後の喫煙だけでなく妊娠中に喫煙していたかどうかによってもリスクは変わりますが…

たとえ妊娠中に完全に禁煙できた人でも、出産後に赤ちゃんが受動喫煙を受けると乳幼児突然死症候群のリスクが上がることが分かっています。

  1. 子どもの周囲で喫煙する人が多いほど
  2. 喫煙者の喫煙本数が多いほど
  3. 子どもが暴露される時間が長いほど

乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが高まります。

一方、片親がタバコをやめると乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが2/3に減少します。(引用図書①より)

この病気は本当に恐ろしいものです。

元気に育っていた我が子が、ある日突然亡くなってしまうんですから。

万が一のことがあった時に、「もしタバコをやめてれば…(減らせてれば…)」と自分を責めることは容易に想像がつきます。

後悔する人がいなることを願ってやみません。

喫煙の影響②:赤ちゃんの急性呼吸器疾患のリスクが増える。

呼吸器疾患というのは、例えば肺炎や気管支炎のような病気のことですが、受動喫煙によってこれらのリスクが増えることが分かっています。

急性下気道疾患と喫煙の関係(引用図書①より)
  • いずれかの親が喫煙する場合→急性下気道疾患のリスクが1.57倍になる。
  • 母親が喫煙する場合→急性下気道疾患のリスクが1.72倍にはる。
  • 両親以外の家族が喫煙する場合→急性下気道疾患のリスクが1.29倍になる。

呼吸器疾患というと風邪のような症状を想像される方が多いかもしれませんが、そのような軽症で済まない場合もあります。

私も、両親が喫煙者の赤ちゃんが喘息の重積発作を起こして亡くなった話を聞いたことがあります。

喫煙の影響③:赤ちゃんが理由なく泣き叫ぶ。

赤ちゃんがわけもないのに叫び続ける状態を「コリック」と言いますが、喫煙によりコリックの頻度が高まるという報告があります(引用図書②より)。

赤ちゃんがわけもなく泣き叫ぶと余計に疲れてイライラするし、そのせいで喫煙本数が増える可能性もありますね。

喫煙の影響④:その他にも様々な症状が出るリスクがある。

赤ちゃんに、嘔吐・腹痛・吐き気・下痢といった、消化器系の症状が出ることが知られています(引用図書②より)。

これらの症状があると、赤ちゃんは母乳やミルク、補完食を十分に飲んだり食べたりすることができなるため、体重が増えにくくなる可能性があります。

体重が増えないというのは単に体が小さいという意味にとどまらず、脳をはじめとする臓器や神経系の発達にも影響を及ぼして、健康を損なうリスクがあることを意味しています。

喫煙の影響⑤:母乳分泌を低下させる可能性がある。

喫煙によって母乳を作り出したり、外に送り出したりするホルモンの分泌が少なくなることも知られています(引用・参考図書③より)。

具体的には、以下のようなことが分かっています。

  1. プロラクチン(母乳を作り出すホルモン)濃度が低下する。
  2. 射乳反射(母乳がピュー!と勢いよく出ること)が起こりにくくなる。
  3. 家族からの受動喫煙によってもこれらのことが起こるため、母乳育児期間の短縮につながる。

授乳(母乳)と喫煙…基本は禁煙!でも禁煙できなくても母乳育児を!

妊娠中・出産後のいずれも禁煙するのがベストだということは言うまでもないですし、「タバコか授乳か?」で揺れてこのページを開いてくださっている方もそれは重々お分かりだと思います。

「母乳はあげたいけど、どうしてもタバコはやめられないし、だったらミルクにするしかないかな?」と思っているかもしれませんね。

確かに禁煙するがベストです。

でも、喫煙しても・しなくても、母乳育児はスタンダードです。

むしろタバコをやめられない人ほど、完全ミルクにするのではなく、母乳育児をした方がいいことが分かっています。

「完全ミルク+喫煙」より、「母乳+喫煙(注意点あり)」の方が赤ちゃんへの悪影響が少ないんです。

アメリカ小児学会も、ニコチン(と喫煙)を「母乳育児の禁忌」から除外しています。

例えば、母乳育児のメリットの中には、このようなものがります。(これは母乳のメリットのごく一部で、他にももっとたくさんあります)

母乳育児のメリットの一部
  • 乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクを減らす。(少しでも母乳を飲んでいると完全ミルクの場合に比べてリスクが6割減ると言われています。)
  • 呼吸器感染症の予防効果。
  • 消化器系感染症の予防効果。

つまり、母乳育児には先述した「具体的な喫煙の影響」で挙げらたリスクを減らす効果があるんですね。

ただし、喫煙しながら母乳をあげるには注意点がありますのでこれを守ってくださいね。(注意点についてはこの後説明しますね)

授乳中に喫煙する場合の8つの注意点

ここでは、母乳を与えながら子どもへのタバコの影響を少なくする工夫についてまとめます。

授乳中に喫煙する時の注意点
  1. 絶対に屋内(特に子供がいる部屋)や、子どもが乗る車の中で吸わない
  2. 授乳直後に喫煙する。
  3. 喫煙後、最低2.5時間は授乳間隔を空ける
  4. 1日の本数を可能な限り減らす
  5. 喫煙後はハンドソープを使って手洗いをする。
  6. 喫煙後はうがいをする。
  7. 長い髪の毛は常にタイトにまとめる
  8. 喫煙時専用のエプロン(割烹着のように肩・腕まで全体を覆うものがいいですね)を着用する。
    (理想を言えば喫煙したら着替えるのがいいと思いますが、難しいと思いますのでエプロンをおすすめします)

⑤~⑧については、手・口腔内・髪・衣類にもタバコの有害物質が残っていて子どもに悪影響があることを考慮した対策となります。

注意点のうちのいくつかは、「喫煙しながらの母乳育児の注意点」というより「子育てをしながら喫煙を続ける時の注意点」とも言えます。

お母さんだけでなく、同居する人をはじめ、赤ちゃんに接する人全員に守ってもらいましょう。

まとめ

喫煙が子どもや母乳育児に与える影響と、どうしても喫煙する場合の注意点についてまとめました。

スモーカーのお母さんって、「タバコはやめられないけど、おっぱいあげたいんです。」って相談しにくいんじゃないですかね?

それで、「母乳あげられたいいけどな…」と思いつつも誰にも相談できず、なんとなく母乳育児をする選択肢を放棄して、ミルクだけで育てている人も多いんじゃないかと想像します。

禁煙への努力は続けてほしいと私も思います。

でも、「今すぐにはどうしても喫煙をやめられない場合には、注意しながら母乳を与えることで赤ちゃんを守ることができる」ということをお伝えしたくて、このページをまとめました。

繰り返しになりますが、今すぐ禁煙できない人でも、注意すれば母乳育児はできるし、した方がいいです。

そうしながら、あなた自身と子ども、家族、周囲の人(道行く人や電車で隣り合う人など)のためにも、禁煙への努力を継続していただければと思います。

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2019年2月28日