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という疑問にお答えします。
乳頭の形が一般的ではないと母乳をあげられるかどうか不安になると思いますが、適切で十分な支援があれば扁平乳頭・陥没乳頭の人も母乳育児をすることができます。
どんな工夫が必要か、本文の中でご紹介していきますね。
- そもそも扁平乳頭・陥没乳頭とはどんな状態か?
- 直接授乳をする上で大切なのは、乳頭の突出ではなく、乳輪の柔軟性。
- 妊娠中の準備:乳頭マッサージの有効性について
- 扁平乳頭・陥没乳頭の人が母乳育児をする時にすると良い工夫
そもそも扁平乳頭・陥没乳頭って何?
という人もいると思いますので、扁平乳頭・陥没乳頭が一体何か?について最初に触れておきます。
扁平乳頭は乳頭が5㎜以上に伸びない状態
乳首が凹んではいないものの、乳房と一体化するくらい乳頭の長さが短い場合、具体的には「軽く乳頭を引っ張っても5㎜以上にならない状態」を扁平乳頭と言います。
きついブラジャー・下着などによって、扁平乳頭化する人もいるようです。
陥没乳頭は、平常時に乳首が凹んだ状態
陥没乳頭は読んで字のごとく、乳首が乳輪に陥没して見えなくなっている状態のことです。
乳頭を何も刺激していない状態で陥没乳頭でも、刺激(乳首をつまむなど)を与えると乳頭が突出してくるかどうかによって以下の2つのタイプに分けられます。
- 仮性陥没乳頭
- 真性陥没乳頭
仮性陥没乳頭
普段は乳首が乳輪に凹んだ状態だけど、
- 乳首を触る、つまむ
- 冷感刺激を与える
など、乳頭に刺激が与えられた時には乳頭が突出してくる乳頭を「仮性陥没乳頭」と言います。
真性陥没乳頭
反対に、
- 乳首を触る、つまむ
- 冷感刺激を与える
などの刺激を与えても、凹んだままの状態の乳首を「真性陥没乳頭」と言います。
母乳育児をするのに大事なのは乳頭の突出よりも「柔軟性」
そもそも、「扁平乳頭・陥没乳頭だと母乳育児が心配」と思った理由は何でしょうか?
「ちくび」という「突出」がないと授乳できないというイメージの人も多いのではないでしょうか?
確かに、取っ掛かりとなる乳頭が突出していた方が赤ちゃんも吸いやすいです。
…が、「乳頭が突出している=赤ちゃんが適切に吸い付ける」わけではなく、最も大事なのは「乳輪・乳頭の柔軟性(伸びやすさ)」なのです。
上記の画像は、
- 左の赤の風船:扁平乳頭だけど乳輪が柔らかく、お母さんの手で「吸い口」を作れている例
- 右のオレンジの風船:扁平乳頭で乳輪が硬く、手で乳房をつぶしても「吸い口」が十分に作れていない例
となります。
ひだりの赤い風船の方は、乳首の突出こそないものの、赤ちゃんが口の奥深くまで引き込むだけの「柔らかさ」があるのがお分かりいただけると思います。
これくらい乳輪が柔らかいと、例え扁平乳頭・陥没乳頭であったとしても、赤ちゃんが乳房に吸着することができる可能性が高まります。
妊娠中の乳頭マッサージの有効性は証明されていない
「乳頭の突出よりも乳輪・乳頭の柔軟性が大事」と書きましたが、そうすると「じゃあ、妊娠中からマッサージを…?」と思いますよね。
どんな乳頭の形であっても、日本では「授乳準備のため」と称して乳頭・乳輪マッサージを指導されることがよくあります。
扁平乳頭・陥没乳頭であれば、なおさら「妊娠中からしっかり!マッサージを!」と言われることもしばしばです。
…が、妊娠中に乳頭・乳輪をマッサージしておくことの有効性は今のところ証明はされていません。
「産後に乳頭の状態が授乳に適した状態になるかどうかは、妊娠中に準備をしたかどうかに関係なく、約半数の女性に見られた」と報告されているように、妊娠中にマッサージなどの準備をしたかどうかよりも、個人差の影響が大きいことが分かっています。
- 扁平乳頭・陥没乳頭であってもなくても
- お母さんの体質・努力よりも
- 出産直後から
- 適切で十分な支援が受けられるかどうか
に掛かっているこということです。
次の項では、じゃあ具体的にどんなことに注意したり工夫したりすればいいか?についてまとめていきます。
扁平乳頭・陥没乳頭の人が母乳育児をするための7つの工夫
先述した通り、母乳を授乳するために必要なのは乳頭の突出ではなく、赤ちゃんが口の奥深くまで吸着できるだけの乳頭・乳輪の柔らかさなのです。
それでも、乳頭が突出している人に比べると色々と工夫・注意することはあるので、それを順番に説明していきますね。
扁平乳頭・陥没乳頭の人が母乳育児をする時の工夫①:出産後すぐから熟練した技術の支援者に授乳を手伝ってもらう。
どんな乳頭の形であっても出産後すぐの時期から授乳支援を受けるのは母乳育児をする上では大事なことです。
とりわけ、おっぱいを吸う時の「取っ掛かり」である乳頭が短い(ない)お母さんの場合、最初はうまくいかないことも多いので、自分だけでやって心身を消耗したり自信喪失する前に熟練したスタッフの授乳介助が必要です。
お母さん1人1人、乳輪がより柔らかく伸びる方向が違っていますし、赤ちゃんが飲みやすい抱き方も異なります。
支援者から色々なアイデアをもらって、コツを教えてもらうのはとても重要です。
- 母乳育児を希望すること
- 扁平乳頭・陥没乳頭なので産後すぐから授乳支援を受けたいこと
を明記しておくのが大事だと思います。
扁平乳頭・陥没乳頭の人が母乳育児をする時の工夫②:哺乳瓶は使わず、補足はカップなどを用いる。
扁平乳頭・陥没乳頭の人は特に、人工乳首とお母さんの乳頭の形が全然違いますよね。
赤ちゃんにとってみれば、出っ張り・取っ掛かりのある人工乳首の方がラクに飲めてしまうのは無理もないことです。
ただ、ラクに飲める人工乳首に慣れてしまうと、相対的に吸い付きにくいお母さんのおっぱいを拒否することもよくあります。
これを「乳頭混乱」と呼びますが、乳頭混乱予防のために一番大切なことは「人工乳首をできるだけ使わないこと」です。
搾母乳やミルクの補足が必要な場合は、できるだけカップ・小さなコップなどを使うと、乳頭混乱を起こしにくいと言われています。
カップでの授乳のやり方は動画が参考になると思います。
扁平乳頭・陥没乳頭の人が母乳育児をする時の工夫③:授乳開始前に乳頭を引き出しておくとうまくいくこともある。
乳輪が柔らかくてもそうでなくても、赤ちゃんが吸い付きにくそうにする場合には、授乳前の準備として
を使って乳頭を引き出しておくとうまくいく場合もあります。
直接授乳がなかなか軌道に乗らない場合には搾乳が必要になることもよくありますから、②よりは①の搾乳器を使う方が出費が少なくて済むので個人的にはおすすめです。(搾乳器は病棟に常備してあることも)
扁平乳頭・陥没乳頭の人が母乳育児をする時の工夫④:頻繁に&適切に授乳・搾乳する。
「母乳の基礎量を決めるのは出産から約1週間」でまとめているように、母乳育児をしたい場合は、
- 頻回に(少なくとも2~3時間毎に)
- 深い吸着で授乳 or 適切に搾乳
するのが必要不可欠です。
それなりの頻度で乳頭刺激をしていれば、乳房はそれなりの量の母乳を作ってくれます。(個人差が大きいですが)
ところが、授乳頻度や吸着の深さが不十分だと、母乳が出ていくための乳腺口が分泌物などで塞がっていて母乳が乳房外に出ていけないために、
- おっぱいがパンパンに張る
- おっぱいが岩のように固くなる
- 乳房だけでなく乳輪までうっ滞して、むくむ
など、異常な乳房の張りになることがあります。
このような「異常な乳房な張り」を起こすと、乳頭という「取っ掛かり」が少ない(ない)扁平乳頭・陥没乳頭の場合は特に、直接授乳が困難になります。
- 母乳分泌を増やすためにも
- 異常な乳房の張りを引き起こして直接授乳を困難にしないためにも
出産直後から、頻繁に&適切に授乳・搾乳するのはとても大事な要素です。
扁平乳頭・陥没乳頭の人が母乳育児をする時の工夫⑤:「上手に直接吸い付けるようになるまで数週間~数ヶ月かかる場合もある」と覚悟しておく。
小さな体で生まれてくる赤ちゃんにとって、お母さんのおっぱいは「佐世保バーガー級」に巨大です。
出生後すぐだと、
- 小さな口なので深く吸着するのが難しかったり
- 吸てつするための力(筋力・持久力)が足りない場合も
あります。
ですから、「取っ掛かり」が少ない扁平乳頭・陥没乳頭では、生後すぐの小さな赤ちゃんには直接授乳がうまくいかないこともよくあります。
なかなか吸い付いてくれないと落胆したり、「ダメなおっぱい…」と自信喪失してしまう人も多いのですが、
- 赤ちゃんが乳頭混乱を起こさず
- 母乳分泌量を増加→維持できていれば
生後数週間~数ヶ月して
- 赤ちゃんの口が大きくなり
- 吸ったり飲み込んだりする力がついてくると
「あれ!?直接授乳できた!」という日がやってきます。
「出産後最初の数週間~数ヶ月はうまくいかなくても、それは普通のことなんだ」と覚悟しておいたり、「軌道に乗るのに少なくとも数週間かかる」と見通しが立てられると、心の持ちようが変わって焦らずに取り組めると思います。
扁平乳頭・陥没乳頭の人が母乳育児をする時の工夫⑥:十分に直接授乳ができない間は搾乳をして母乳分泌増量・維持をする。
繰り返しになりますが、扁平乳頭・陥没乳頭でも赤ちゃんが口の奥深くまで吸い付けるだけの乳輪・乳頭の柔軟性があれば、直接授乳はできます。
乳輪の柔軟性が産後すぐによくなるか否かは個人差によるところが大きいので、「産んでみないと分からない」という非情なところがあります。
もし、出産してすぐに授乳を始めてみても
- 乳輪の柔軟性が十分でなかったり
- 赤ちゃんが口の奥深くまで吸い付くことができず
直接授乳ができない場合は乳頭刺激が少なくなりますから、放っておくと母乳は出るようになりません。
お母さん自身が望むのであれば、十分に直接授乳ができない場合は母乳分泌の増量→維持のために搾乳が不可欠です。
搾乳をしている内に
- 乳頭が突出してきたり
- 乳輪・乳頭が柔らかく・伸びやすくなってきたり
- 赤ちゃんの口が大きくなってきたり
- 赤ちゃんが吸い付くだけの筋力・持久力がついてきたり
して、直接授乳ができるようになることで搾乳が不要になる日がくることもあります。
授乳の練習と搾乳の両方を継続していくのは口で言う以上に大変な事でもありますので、どこまで追求するかはお母さんの心身の状況次第です。
「理屈としてはこうだ」ということですので、ご自身の心身の健康状態・疲労度などを勘案して、どれくらい搾乳するのか/しないのかは、臨機応変に決めていただければと思います。
扁平乳頭・陥没乳頭の人が母乳育児をする時の工夫⑦:可能なら、妊娠中に乳頭・乳輪マッサージをしたり、乳カス除去をしておくのもいい。
「さっき『妊娠中の乳頭マッサージの有効性は証明されていない』って言ったのに矛盾してるじゃん!」と思いますよね。
妊娠中の乳頭・乳輪マッサージの有効性に科学的根拠はないですが、
- 正常な妊娠経過で
- 妊娠37週を過ぎていて
- 経腟分娩予定で
- お母さん自身も「妊娠中の内にできることは何でもやりたい」という思いなら
妊娠中からマッサージをしてもいいんじゃないか?というのが私の個人的な考えです。
「妊娠中から乳頭・乳輪マッサージをしてもいいんじゃないか?」と私が考える理由
「妊娠中から乳頭・乳輪マッサージをしてもいいんじゃないか?」と私が考える理由は以下の通りです。
- お母さん自身が自分の体を触ることで、乳輪がどの方向につぶすとよく伸びるか発見できるかもしれないから。
- 「どこをどう触ると痛みなく母乳が出るのか?」のヒントが得られる可能性があるから。
- お母さん自身に「私にできることはやりきった感」があると、産後すぐに授乳がうまくいかなくても焦らない人が多いように感じるから。
- 特に陥没乳頭の場合、乳頭マッサージをしているうちに乳頭の溝にたまった乳カス(分泌物)が取れて、乳腺を塞ぐものを除去することができるから。
- 乳頭刺激による子宮収縮によって子宮口の熟化が進み、分娩時に子宮口がスムーズに開くことが期待できるから。
- 正常な妊娠経過&正期産&経腟分娩予定なら、乳頭刺激による子宮収縮には害はないと考えるから。
妊娠中に乳輪・乳頭マッサージをする場合のやり方
繰り返してきているように、妊娠中からマッサージをする有効性は証明されていないので、できなくても気に病む必要はないですし、どちらでもいいと思います。
ここまでお読みいただいて、妊娠中からマッサージをするかどうかは各個人の自由ですが、「マッサージをしてみたいな」という方向けに、やり方をご紹介しておきますね。
マッサージ・マッサージと繰り返し書いていますが、マッサージと言ってもやること(テクニック)は搾乳と同じでいいと私は考えています。
手でしてもいいですし、妊娠中であっても、先述した前提条件に当てはまる人なら搾乳器を使ってもいいと思います。
いずれにせよ、共通する大事なポイントは「痛くしない事」です。
具体的な方法・コツについては搾乳記事にまとめていますので、参考にしてくださいね。
まとめ
扁平乳頭・陥没乳頭の場合に母乳育児を進めていくためのポイントをまとめました。
- 出産後すぐから熟練した技術の支援者に授乳を手伝ってもらう。
- 哺乳瓶は使わず、補足はカップなどを用いる。
- 授乳開始前に乳頭を引き出しておくとうまくいくこともある。
- 頻繁に&適切に授乳・搾乳する。
- 「上手に直接吸い付けるようになるまで数週間~数ヶ月かかる場合もある」と覚悟しておく。
- 十分に直接授乳ができない間は搾乳をして母乳分泌増量・維持をする。
- 可能なら、妊娠中に乳頭・乳輪マッサージをしたり、乳カス除去をしておくのもいい。
授乳のことは非常に個別性が高い上、扁平乳頭・陥没乳頭の場合はことさら、このように1つのページに一般化してまとめるのは難しいです。
ですから、ここにまとめたことはすべての扁平乳頭・陥没乳頭人に当てはまる訳ではありません。
母乳育児を進めるにあたっては、信頼できる支援者を見つけて、よく相談しながら進めていってくださいね。
事前に何か準備しておいた方がいいことはあるの?どう工夫すれば母乳をあげられる?