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「赤ちゃんを母乳で育てたいけど、妊娠中にできることはあるかな?」と考えて、こうして調べているあなたは、母乳育児が成功する確率がグンと上がっています。
なぜなら、母乳育児は出産後すぐのスタートダッシュがカギだから!
- 「やっと無事出産が終わったんだから、しばらくゆっくり休みたい」
- 「入院中は赤ちゃんを預かってもらって、よく眠っておきたい」
- 「母乳で、できれば母乳だけで育てたい」
こんな声⇧をよく聞きますが、上記の①・②↔③は両立するのがとても難しいのです。
産後しばらくして(あるいは退院後に)
- 母乳出るようにならないな
- 乳首が痛い
- おっぱいが張って痛い
と困ってから検索したのではちょっと遅い。
このページでは、そんなトラブルを予防し、母乳育児をスムーズに軌道に乗せられるよう「妊娠中の知識の準備」についてまとめます。
ポイント①:出産後なるべく早く、最初の授乳をする
「出産後なるべく早く」とは具体的にどれくらいかというと、30~60分以内です。
WHO/UNICEFの「母乳育児成功のための10か条」の1つでもあります。
一般的に出産後30~60分以内というと、
- 経腟分娩(普通分娩)の場合:分娩台で産後の処置~着替え中
- 帝王切開の場合:手術室で閉腹中
が多いです。
ポイント①を実現するためには病院スタッフの協力が欠かせないので、必ずバースプランに記入しておいてくださいね。
もちろん、すべての母子が「出産後すぐの授乳」ができるわけではありません。
代表的なできない理由を以下にまとめておきます。
- 出産直後のお母さんや赤ちゃんの全身状態が悪い。
- 病院の体制・その日の他の患者さんの人数・重症度によって、分娩直後の授乳を手伝えるだけの人手がない。
- 病院の方針として、出産直後の授乳はしないことになっている。
- 病院の方針として、手術室での授乳ができない。
母子の全身状態の安定は何よりも優先すべきことなので、①の場合は致し方ありません。
母子の状態が安定してから授乳を始めてください。
②~④については産院選びの段階で考慮すべきことなので、既に産院決定済みの人は「30~60分以内」ができなくても「でき得る限り早いタイミングで」最初の授乳をするようにしてくださいね。
「30~60分後」と、とても早いタイミングでの授乳が推奨される根拠は、出産を機にお母さんの体の中で起こるホルモンの大変化です。
こちら⇩のグラフを見てみてください。
妊娠中はお母さんの体に胎盤があるから抑制されていた母乳生成&分泌。
「出産=胎盤を体外に出すこと」でもあるので、母乳生成&分泌への抑制が一気になくなります。
一方で、出産に向けてピークになるホルモンが「プロラクチン」です。
プロラクチンは言い換えるなら「母乳製造ホルモン」。
このプロラクチンが「母乳をどれだけ作れる体になるか」のカギを握ります。(厳密には他のホルモンも母乳生成に関わっていますが)
母乳製造ホルモンであるプロラクチンはとても特徴的な分泌をします。
- 分娩直後が最高で、その後はゆっくり下降する。
- 授乳しなければ下降を続け、分娩後7日目までに妊娠していない時のレベルまで低下する。
- 乳頭刺激(授乳や搾乳など)をすると一過性に上昇し、下降速度がゆっくりになる。
- 授乳すると、分娩後1週間で分娩直後の50%に低下する。
ざっくり簡単にまとめると、
- 出産後ゆっくりしている間に、急激に母乳製造ホルモンがどんどんなくなっちゃう!
- だからなるべく早く最初の授乳(搾乳)をして、母乳製造ホルモンがなくならないようにしないと!
となります。
この4点を逆手にとった対策が「出産後なるべく早く最初の授乳を(+以下のポイント②~③)」になるのです。
ポイント②:出産当日から頻繁&赤ちゃんが欲しがるままに授乳する
ポイント①で母乳製造ホルモン(プロラクチン)の話をしました。
もし出産後すぐに授乳できたとしても、そのあと授乳・搾乳しなければ母乳製造ホルモン(プロラクチン)値はどんどん下がっていきます。
繰り返しになりますが「母乳が良く出るようになるかどうか=プロラクチン濃度を下げないようにすること」です。
母乳製造ホルモン(プロラクチン)レベルを上げるために、最初の授乳の後も赤ちゃんが欲しがるままに頻繁に授乳します。
出産間もない時期に母乳だけで育てる場合、1日の授乳回数は10~20回くらいになるのが普通です。
もし赤ちゃんが眠っていて授乳したがらない場合でも、少なくとも2~3時間毎に授乳しましょう。
赤ちゃんの状態が安定しないなどの理由で授乳ができない場合は、2~3時間毎に搾乳(量が取れなくてもOK)しましょう。
「右〇分、左〇分」のように時間を決めて授乳するのではなく、赤ちゃん任せにするのが基本です。
「授乳回数の目安」「授乳時間の目安」の記事もあわせてどうぞ。
ポイント③:夜間も授乳する
母乳製造ホルモン(プロラクチン)は授乳・搾乳以外にも睡眠中に分泌される(母乳がたくさん作られる)ことが知られています。
「せめて夜はぐっすり眠りたい」というお気持ちはよく分かります。
でも、むしろ本当は、夜は外せない授乳タイミングなんです。
赤ちゃんも昼間によく眠って夜活発に授乳したがるのが普通ですので、赤ちゃんの欲求に合わせていると自然にそうなると思います。
お母さんの体と心が持つように、日中の面会は最低限に調整して小まめにお昼寝したり、横になったりするのがおすすめです。
ポイント④:赤ちゃんに深く・適切に吸いついてもらう
ポイント②~③を現実的なものにするためには、「痛くない授乳」が必須です。
乳首が切れたり真っ赤になったりしていては、とても1日10~20回も授乳していられませんよね。
「産後すぐの授乳はみんな痛いものだ」と思っている人もいるかもしれませんが、そうではありません。
痛くない授乳をするためのコツは、とにもかくにも「赤ちゃんに深く吸ってもらうこと」です。
深く吸ってもらうための具体的なテクニックについては、「痛くない授乳のやり方10個のコツ」にまとめています。
ポイント⑤:必要に応じて乳頭のマッサージをする
赤ちゃんは口の奥深くまで乳頭~乳輪を引き込んで母乳を飲み取ります。
つまり、口の奥深くまで乳頭~乳輪が伸びる必要があるということです。
妊娠中の乳房・乳頭のマッサージについて科学的には効果があるという根拠はありませんが、私の経験則としては、
- 陥没乳頭
- 扁平乳頭
- 乳頭・乳輪が硬い
- 乳頭が短い
- 乳頭が太い
の場合は、工夫や根気、十分な支援が必要になるケースが多いと感じます。
言い換えれば、「工夫次第・支援次第でどんなおっぱいでも母乳育児できる可能性は十分ある」とも言えます。
上記の①~⑤に当てはまる人は特に、妊娠中から乳頭・乳輪のマッサージをして柔軟にしておくと「良く伸びる授乳しやすいおっぱい」になります。
マッサージを始めるタイミングは個々の状況によって違うので、産院で自分に合ったタイミングを聞いてくださいね。
- 痛くなくて
- 乳頭・乳輪が柔らかくなる
のなら、どんなマッサージ方法でもOKです。
【乳輪を柔らかくするマッサージ】
手で搾乳するようにすればOK
【乳頭を柔らかくするマッサージ】
こんな風に⇧人差し指と親指の2本で乳頭をはさみ、乳頭の付け根~乳頭の先に向かって優しくつぶすように(痛くない程度の力で)マッサージします。
いろいろな方向からマッサージするのがポイントです。
また、①の陥没乳頭の場合は、乳口にカスのようなものが溜まっていることがよくあります。
乳頭に詰まったカスは、マッサージした時に綿棒などで優しく取り除いておくと、産後に母乳分泌の邪魔をしなくていいですよ。
ポイント⑥:ミルクを足す場合は、乳頭混乱にならない工夫を。
いろいろと工夫して頑張っていても、お母さんや赤ちゃんの状況によってはミルクが必要になることもあります。
ミルクを使うときは、乳頭混乱にならないように工夫しておくとトラブルになりにくいですよ。
簡単に言うと、赤ちゃんが哺乳瓶の人工乳首に慣れてしまって「おっぱいはイヤ~!」となっている状態のことです。
「おっぱいイヤ!」と乳頭混乱を起こす理由は2つあると思います。
- 母乳と哺乳瓶とでは赤ちゃんの舌・顎の使い方が違うので、哺乳瓶の動かし方に慣れると母乳バージョンに戻すのをイヤがる。
- 人工乳首は赤ちゃんが顎をしっかり動かさなくても、ビンを逆さまにしただけでミルクが出てくるものもあり、「こっちの方がラクに飲める」と赤ちゃんが感じる。
乳頭混乱にならないためのポイントを4つ挙げます。
- 医学的に必要のないミルクをなるべく使わない。
母乳だけ・母乳メインの母乳育児を目指す場合は、特に最初の1ヶ月程度は「お母さんが休むため」のミルクは最後の一手としてとっておきましょう。 - ミルクを与える時はカップやスポイトを使う。
- 哺乳瓶を使う場合は、赤ちゃんが大きく口を開けるまで待って人工乳首を口に入れる。
- 哺乳瓶を使う場合は、逆さまにしただけでミルクが漏れ出てくるような乳首を使わない。
(小さく生まれて吸う力が弱い赤ちゃんでは、このような乳首をあえて選ぶ場合もあります)
まとめ
母乳育児をスムーズに軌道に乗せるために、妊娠中に知っておくといいポイント6つについてまとめました。
- 出産後なるべく早く、最初の授乳をする
- 出産当日から頻繁&赤ちゃんが欲しがるままに授乳する
- 夜間も授乳する
- 赤ちゃんに深く・適切に吸いついてもらう
- 必要に応じて乳頭のマッサージをする
- ミルクを足す場合は、乳頭混乱にならない工夫を。
細かい知識・テクニックは他にもありますが、最低この6つを押さえておくだけでも母乳育児スタートにかかる苦労が減ると思います。
この6つのポイントについては実施していない産院も多いので、自分自身の希望としてバースプランに書いておくのがおすすめです。